国際ニュース誤解しやすいことば3選:「親日国」「内戦」「国際貢献」

みなさんこんにちは、コクレポです。

みなさんは、国際ニュースを聞くとき、「国際貢献」とか、「親日国」とか、「内戦」とか、ってことばよく聞きますよね。

それぞれどんなイメージを持っていますか?

この意味、実はとっても誤解を招きやすい言葉で、注意しないといけないんです。

今回は勘違いされやすい、3つの言葉を正しく理解してもらいたいなと思います。

「国際貢献」

日本のメディアでは、「国際貢献」は主に自国から他国への「支援」という文脈で使われています。

でも、「国際貢献」の定義をみると、支援はその一部に過ぎません。

たとえば、ブリタニカ国際大百科事典小項目事典によると、国際貢献とは「国際的な課題に積極的な役割を果していこうとする立場」とされています。

国際的な課題に積極的に取り組むのなら、支援以外にも、問題を助長させてしまっている行動をやめることや、根本的な原因を取り除くことなども大切なはずです。

前のタックスヘイブンの記事で、お母さんが1万円のご褒美くれながら裏で100万円引き抜いてたらどんどん貧乏になるよね、っていうお話しましたよね。

この1万円貰えることより、100万円流れていってることに注目することのほうが大切ですよね。

低所得国における貧困問題は、世界の開発支援の総額よりも、タックスヘイブン問題などの不法資本流出や、チョコレートの裏側で解説した不公平な貿易といった搾取による損害のほうが遥かに大きいです。

発展途上国からの不法資本流出総額(2012年 推定)

また、気候変動問題に関して、他国政府は次々と引き上げているのに、日本政府は国内外で火力発電所の建設や運営に、多額の助成金を提供し続けていて、気候変動を助長させています。

ところが日本のメディアでは、不法資本流出や不公平な貿易に関する報道はほとんどなくて、気候変動問題に関しても根本的な原因を探る報道は少ないです。

つまりメディアは、世界の課題の改善を妨げていることは着目せずに、問題に対して行われている比較的少額の「支援」だけを「国際貢献」としています。

これでは、「国際貢献」の意味は「支援」って勘違いしてしまいますよね。

「親◯国」

国家間や、貿易、国民の間の関係で、ある国が他国に対して好意的であるという意味で「親◯国」という言葉が報道でよく使われていますよね。

どこどこの国は親日国だから~~とかよく聞きますね。

でも、この言葉は具体的に誰のことをどのように指しているのか、とてもあいまいです。

国家の政権として、他国の政権に対して良好な関係がある場合はもちろんあります。

でもそれは政権同士の関係なので、「親○政権」のような表現のほうが相応しいですよね。

国民が持つ他国に対する感情に関していえば、「親しい」、「好意的」という感情が生まれるほどの交流や知識をもっている人はそれほどいるんでしょうか。

限られた経験・情報の中からなんとなくのイメージを持ってしまっているだけではないでしょうか。

たとえ他国に対する具体的なイメージを持っていたとしても、その政権や外交政策に対するイメージと、国民に対するイメージがズレることも十分考えられますよね。

さらにその他国の企業に対しても、政権や国民とはまた別の次元でのイメージが存在します。

自国の経済に貢献しているのか、それとも搾取に関わっているのかなど、さまざまな要素が考えられます。

こう考えると、そもそも他国の国民全体をひとつのイメージでまとめて表すこと自体ナンセンスですよね。

しかしそれにもかかわらず、報道では「親日国」という言葉がたびたび登場し、様々な誤解を招いています。

2016年にバングラデシュで発生したテロ事件で、殺害された20名のうち日本国籍を有する者が7名含まれていました。

多くのメディアではバングラデシュのことを「親日国」として表現して、日本人であることを知られていながらも殺されたことに驚きを隠せないという報道がありました。

たとえば、NHKの『時論公論』では、「親日国とはいえ、『日本人だったら助けてもらえる』とは限らないことが、今回示されました」と述べられていました。

つまり、この事件が発生するまでは、バングラデシュ=親日国であることが前提とされており、ゆえに事件があったとしても、日本人だから助けてもらえるはずだと思われていたように読み取れます。

勘違いが、このように危険な状況に繋がることも十分考えられるんです。

「内戦」

武力紛争が報道されるとき、「国家間戦争」と「内戦」の2択に分かれていますよね。

つまり紛争というラベルを貼るときに、「国家」が主要な単位になっています。

その中でも「国家間戦争」は非常に限定的な場面でしか使われない傾向にあります。

たとえば湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争のように、2つ以上の国家の国軍が大々的に衝突する戦争以外は、「内戦」とされる場合が多いです。

でも、ある紛争に「内戦」というラベルが貼られると、あたかもひとつの国の中だけで紛争が起きていて、紛争当事者もその国の中の人だけかのようにイメージしてしまいませんか?

そもそも紛争の現状と仕組みを正確にみれば、「国家」は必ずしも適切な単位になっていないことがわかります。

たとえ暴力行為そのものがひとつの国の領土内で起きているとしても、ほぼ例外なく、他国の軍や武装勢力、民間軍事会社などが直接関与しています。

また、武器ビジネスの記事でも解説したように、紛争当事者に基地、資金、物資、武器などを提供する者の中に、国外の多くの企業等が含まれています。

さらに隣国に難民が流れ出たり、紛争自体が他国への不安定材料となることも多いです。

複数の国の領土内にある個別の紛争が混じり合うケースもたくさんあります。

たとえば「シリア内戦」とよく報道されてますよね。

でもシリアの紛争では、アメリカ、ロシア、イラン、トルコ、イスラエルなどが直接当事者となった経緯があって、これらの国がシリア内で直接衝突することもあれば、国の一部が占領されたこともあります。

さらに、隣の国レバノンの武装勢力であるヒズボラや、複数の国外からきた民間軍事会社も参戦しています。

「イスラム国」(IS)と呼ばれた武装勢力がシリアとイラクの一部を支配下に置いたときには、国境とは関係なく行動をとっていました。

クルド勢力も複数の国の領土をまたいでいます。

つまり「内戦」というラベルはこの紛争の本質をまったく捉えていないんです。

「内戦」ということばが相応しいほど国内のみで起きている紛争はほぼ無いんです。

コラム

みなさん、3つの言葉、勘違いしていませんでしたか?

このように、国際報道でよく登場する重要なことばが、大きな誤解を招く形で使われています。

これってとても大きな問題で、このような誤解をまねく報道は、世論形成に影響を与えて、それがやがて世界の問題に対して、政府や企業が行動を改善する妨げになってしまっています。

他にも誤解を招きやすい言葉たくさんあるので、ほんとの意味を理解して、正しく国際ニュースを理解できるように、また解説したいと思います。

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