世界の紛争はなぜ続く?闇すぎる武器ビジネスとは?

みなさんこんにちは、コクレポです。

みなさんテレビで、銃撃や空爆の映像を見た時、どうしてこんな危ない国や組織に、武器がいってしまうんだろう?と考えたことはありませんか?

実は、紛争が発生している国のほとんどは、自国で武器を作っていません。

紛争でたくさんの市民が犠牲になっているなか、紛争によって大きな利益が出る国や会社があるんです。

今回は世界の紛争が続く1つの大きな原因、武器ビジネスをテーマに解説していきます。

武器ビジネスの概況

世界の武器は、ほとんどが私企業が作っていて、それを各国政府が購入しています。国境を越えて売り買いする武器貿易は、企業は、政府から輸出許可をもらわないといけません。

2017年の世界の武器貿易総額は、少なくとも950億ドル(約10兆円)で、上位100社の売上は、なんと4,200億ドル(約46兆円)もあります。武器の国際取引は、冷戦終結からどんどん増えていて、現在ピークのレベルとなっています。

武器輸出はアメリカ、ロシアがトップ2で、この2か国で57%を占めていて、フランス、ドイツ、中国、イギリス、スペイン、イスラエル、イタリア、韓国が続きます。

SIPRIレポート引用

輸入はサウジアラビア、インド、エジプト、オーストラリア、中国、アルジェリア、韓国、UAE、イラク、カタールと続いています。

現在、世界最悪の人道危機といわれているイエメンでは、サウジアラビアの空爆によって、推定8,750人の民間人が死亡していて、2020年7月のサウジの空爆では少なくとも7人の子供が死亡しまし。しかし、ちょうど同じ時期の2020年7月、イギリス政府は一時停止していたサウジアラビアへの武器輸出を再開すると発表したんです。

サウジ主導の連合空爆でスクールバスが空爆を受け、数十人の子どもが死亡した。Creative Commons — Attribution 2.0 Generic — CC BY 2.0

そして、2020年度の9月から12月だけで、サウジアラビアへ19億ポンドの武器販売の売り上げがありました。

サウジアラビアもアラブ首長国連邦(UAE)も人道危機がいま世界最悪レベルとされるイエメン紛争に大きく加担していることがずっと指摘されているんですが、輸入ランキングをみてもわかるように、武器販売は止まらないのが現実です。

武器の製造トップ企業100をみてもアメリカは目立っていて、企業数は100社中42社、売上高は57%をアメリカ企業が占めています。

製造額トップはアメリカ、ロッキード・マーティン社で、2位と3位には同じくアメリカのボーイングとレイセオンが続いています。アメリカ以外では、イギリスのBAEシステムズ、オランダとフランスに本社を持つエアバス・グループ、フランスのタレス、イタリアのレオナルド、ロシアのアルマズ・アンテイが、それぞれトップ10にランクインしています。

また、データ不足のためこのランキングからは除外されているんですが、中国の武器メーカー3社はトップ10に含まれる可能性が高いと推測されています。

SIPRIデータより引用

武器と紛争

定義によって武力紛争の数は変わるんですが、2019年に進行していた紛争の数は54件で、紛争が発生している国のほとんどは、自国で武器を作っていません。つまり、武器ビジネスによって紛争が可能になってしまっている状況なんです。

USDPデータ引用

モノを売るのはなんでもそうですが、自分が売った後、どのように使われるかまでコントロールするのはとても難しいです。売る側は単に防衛用として武器を取引するつもりでいても、その武器がテロ組織などに転売されたり強奪されたりして、一般市民への攻撃や戦争犯罪に利用されてしまうこともあります。

また、武器の中には寿命がとても長いものもあり、売買してすぐ使い捨てられる物でもありません。

たとえばイスラム国(IS)が使っている武器は、少なくとも25か国で製造されたもので、ほとんどの武器は1970年代から1990年代までのものでした。 

そして、武器ビジネスによる紛争が人々を苦しめるのは、直接的な武器の使用だけではありません。世界の食料不足の主な原因も紛争なんです。紛争地域では農業を営むことができないですよね。またそのせいで価格が高くなり、購入できなくなることもあります。

たとえば2020年、ブルキナファソ・マリ・ニジェールといった西アフリカ諸国では、紛争による情勢不安などから、480万人が食料不安に陥るとされています。また、イエメンでは2021年中に40万人の子どもが、飢餓で死亡する危険があるとされています。

水不足も紛争によって悪化します。敵の給水路を断つ目的で、井戸などが空襲の標的にされたり、直接狙われなくても、大きな爆撃によって、水資源が利用できなることもあります。

また、紛争は医療へのアクセスも妨げます。紛争地域の病院が空爆などの被害を受けて機能不全になったり、攻撃を恐れて休業する病院もあって、緊急時に医療サービスを受けることが難しくなってしまうんです。

このように、武器ビジネスが手助けする紛争は一般市民の生命を脅かしています。

武器ビジネスが終わらない理由

武器ビジネスはこのように一般市民の安全を脅かしているのに、なんで取引額は増加していくのでしょうか。

その一番大きな理由は、「儲かるから」です。他国が戦争をするとそこに武器を輸出すれば、その国はたくさんお金儲けができます。儲かるのは大手武器メーカーとその下請け企業だけではありません。

製鉄業や電子機器産業など、直接的には軍事産業と関わっていなくても、材料の生産に関わる業界も売り上げが伸びるんです。

武器見本市に展示される無人航空機(写真:rhk111 / Wikimedia Commons[CC BY-SA 4.0])

武器輸出は取引額がとても大きく、2017年のアメリカとサウジアラビアの契約は、なんと10年間で3,500億米ドルにもなります。

武器メーカー・輸出国政府にとってビッグチャンスで、ライバルの国やメーカーに出し抜かれないよう、どんな手段を使っても契約を勝ち取りたいと考えやすく、さらに、安全保障上の観点から、情報公開があまりされなかったり、輸入国が独裁国家であれば国内で監視が働きにくいため、賄賂などの汚職事件の例が多いんです。

また、武器メーカーと政府関係者は深い関係を持っているんです。政治家は武器をたくさん製造、販売できるようにすれば、雇用を生み出すことで市民の支持を得たり、企業に有利な政策を実現したとして、企業から選挙献金を集めたりすることができるので、次の選挙を有利に進めることができます。

自らの利益を最大化するために行動するなら、武器を生産・輸出し続けたほうが、紛争の被害者以外は得をする仕組みになっているんですね。

問題への対策

この問題に、どんな対策が行われているんでしょうか。

たとえば2014年、人道に悪影響をもたらす武器の不正な取引を防止することを目的とする武器貿易条約(ATT:Arms Trade Treaty)が発効しました。

しかし2大武器輸出国を見てみると、アメリカは未批准、ロシアは未加盟という状況で、さらに、人権侵害に利用されるかどうかは、解釈次第で規制を逃れることもできるんです。

実際、ATT批准国のフランス・ドイツ・イタリア・カナダも、イエメン紛争で人権侵害・戦争犯罪に関与しているサウジアラビアに大量の武器を輸出しています。

国際条約は本当に意味があるのかな、と思ってしまいますが、政治家や市民団体、メディアなどがこの解決に活躍することもあります。

たとえば、アメリカの武器輸出には人権団体が強く抗議していて、バイデン政権はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)への武器輸出は、イエメン紛争など人道危機をもたらすことに繋がる、として中止をしました。

また、市民の団結によってブロックしたこんなエピソードもあります。

2008年、アフリカのジンバブエで長年政権を握っていたムガベ大統領は、軍を使って、野党の政治家や支援者たちを暴力で抑えつけていました。軍は中国に武器を発注して、南アフリカの港まで海路で運んで、そのあとトラックでジンバブエに届く予定でした。

しかし、南アフリカの弁護士や人権団体が、その武器で人権が侵害されるに違いないと、強く反発したんです。武器が南アフリカ・ダーバンの港に到着した時には、港湾労働組合がその運動に加わり、船からコンテナを下ろす作業を拒みました

南アフリカで下ろすことを諦めた船は、隣の国のモザンビークやアンゴラで下ろすことを試みましたが、同じように港湾労働組合の力で阻止されたんです。

南アフリカダーバン港(写真:Media Club/Wikimedia Commons [ CC BY-SA 2.0])

コラム

私はコソボで紛争でボスニアに逃げなければいけなかった話を聞いたり、コンゴ民主共和国出身で家族全員殺された男の子から話を聞いて、紛争はなんで続くんだろう、どうやったら解決できるんだろうと考えてきました。

もちろん、武器を製造する技術のない国に、技術大国が武器を輸出することは経済活動の1つです。でも、少なくとも世界最悪の人道危機を引き起こしているサウジアラビアにこんなに武器を輸出している状況は見直されるべきではないでしょうか?

イギリスも、裁判所はサウジに輸出するのは人道危機に加担することになるため違反だ、と判決を出しているんですが、問題ないと政府のごり押しです。

この事実を知って、たとえば日本でも、「武器をもっと輸出しましょう!もちろん紛争に加担するような国には輸出しません!」と政府が言っても、ほんとにサウジを紛争加担の国として認めるのかな?その武器がどこに流れ着くかコントロールするのは難しいけど、どこかの国の紛争に加担することになってしまわないかな?そもそもほとんどの日本人はどこでどんな紛争がどんな原因で起こっているか知らないのに、輸出していい国を判断できるのかな?と考えるようになりました。

最後の南アフリカの例は、他国の人権侵害の状況を知っていたからこそできた成功例ですよね。国際問題を知る、ということは問題の解決策の一歩となると思うので、これからも国際問題をできるだけ分かりやすく解説したいと思います。

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