世界の死刑の現状!死刑採用国の実態・世界で廃止が進む理由

みなさんこんにちは、コクレポです。

現在世界では死刑は多くの国で廃止されてて、日本はマイノリティーなことを知ってますか?

国はなんで死刑を採用して、どんな罪に死刑を執行するんでしょうか?

逆になんで死刑に反対し、廃止するんでしょうか?

今回は、死刑採用国の実態や、死刑が行われている理由、死刑を廃止する理由をそれぞれ紹介したいと思います。

世界全体の死刑の現状・傾向

2018年、世界全体での死刑執行件数は前年に比べて30%以上減少し、2019 年はここ10年で過去最低の件数となりました。

この背景には、主要な死刑執行国とされているイラン、イラク、ソマリア、パキスタンでの大幅な減少があったことや、死刑廃止国が増えたことがあります。

実際に、2019年末までで、106カ国が死刑を廃止しました。

法律としては保持していても、実践的には死刑が行われていない国も含めると142カ国になります。

しかしまだ、死刑採用国は56カ国にのぼります。

死刑執行数が多い順に中国、イラン、サウジアラビア、ベトナム、イラクなどが挙げられます。

中国の件数が大きくなってしまうのは人口の多さも1つの理由です。

また、北朝鮮も情報は非公開になっていますが、毎年死刑を実行していると言われていて、年によっては60件を超えるような場合もあるようです。

Amnesty InternationalのデータをもとにGNVが作成

これらの国はどのような罪に対して死刑を行なっているんでしょうか?

死刑になる罪ってどんなものが思い浮かびますか?凶悪な殺人事件とかでしょうか?

でも実際は、麻薬関連反政府的行為同性間の性交などに対しても行われているんです。

処刑方法としては、首切り、感電死、首吊り、毒投与、射撃など、国によってさまざまです。

それでは、実際に各国の実態を詳しく見てみましょう。

死刑採用国各国の実態

中国

中国は世界トップの死刑執行数とされているが、実態は国家機密として公開されていません。

国連などの国際組織が40年以上にわたって情報公開を要求していますが、正確な死刑執行数は隠されたままです。

また、メディアでも一部の執行しか報道されないため、実態がより不透明になっています。

中国最高人民法院は、2018年3月、ここ10年間で死刑執行の見直しを行い、極めて重い罪に限定して執行するようにしたと発表しましたが、いまだに年間に数千人が処刑されているようです。

次に、死刑執行人数トップ5を大きく占めているのが、サウジアラビア、イラン、イラクの3カ国です。

サウジアラビア、イラン、イラク

これらの地域の人権問題は深刻で、共通している特徴は公平性を欠く裁判制度です。

被告人は弁護士との接見を許されず、拷問下で「自白」を強制されることもあります。

イラクにおいては、IS(イスラム国)関係で逮捕された被告人を弁護しようとした弁護士らが逮捕されるということもありました。

裁判官も政府との結びつきがあるなど、司法独立ができていません。

また、死刑とされる罪も幅が広く、麻薬関連や不倫同性間の性交国教への背信や、テロ活動の疑いがあるというあいまいな罪で死刑となるケースがあるんです。

イランにおける公開処刑の場 (写真:Mohsen Zare/Wikimedia Commons [CC BY 4.0] )

18歳未満に対して死刑が行われていることも大きな特徴です。

18歳未満に対する死刑は国際人権規約により禁止されています。

それにも関わらず実行していて、特にイランでは多く、1990年からの記録で、97人の18歳未満の子供が処刑されています。(他に18歳未満に対して死刑を行なっている国々の合計の約2倍

裁判所は被告人が犯罪を犯した時点で十分「精神的に発達」していたなどの言い分を残しています。

サウジアラビアにおいても、2019年6月、結果として死刑には至りませんでしたが、10歳時に反政府デモに参加したことなどで13歳時に逮捕され、死刑の判決を受けた少年がいました。

処刑の方法に関しては、公の場での首切りを始め、首吊り、銃殺となっています。

もちろん中東・北アフリカ地域全てがこの3カ国のような死刑制度なわけではありません。

イスラエルでは、1962年以来死刑は行われていませんし、チュニジアやアルジェリア、モロッコでも1990年代以降死刑は行われていません。他にも多くの国が死刑を廃止しています。

続いて東南アジアの実態を見てみましょう。

東南アジア

東南アジアの中でもベトナムは死刑執行数世界第4位であり、年間100人以上が処刑されています。

この地域全体で特徴的なのは麻薬関連の罪に対する死刑が多いということです。

東南アジアの麻薬の問題は深刻で、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、タイは麻薬不正取引に関わる犯罪を死刑に処するとしています。

また、フィリピンでは、死刑が一時的禁止の状態ですが、麻薬の使用が疑われたものは街中で警察によって殺され、麻薬戦争が起こったことでも知られています。

また、特にシンガポールでは所持していた麻薬がどんなに微量でも死刑です。

インドネシアの空港。麻薬取引者には死刑と記されたウェルカムボード (写真:Jeroen Mirck/Flickr [CC BY-NC 2.0])

経済協力開発機構(OECD)諸国の中で死刑制度を採用し続けているのは、アメリカ・日本・韓国だけです(しかし韓国は1997年から死刑を執行していません)。

アメリカ、日本

他のほとんどの先進国が死刑を廃止していく中で、死刑を続けている実態はどうなっているんでしょうか?

まず、アメリカから見てみましょう。

アメリカ全体での2018年の死刑執行数は25人で、世界第7位でした。

しかし、アメリカはそもそも、州によって法律が異なります。

現時点で50州中22州は死刑を廃止しているんです。

この10年死刑を執行していない州も含めるとアメリカの3分の2以上にのぼります。

死刑を採用している州での問題1つ目は、人種による差別があることです。

白人が有利な立場で、アフリカ系アメリカ人が不当に扱われているとされています。

2つ目は、精神障害者に対する死刑です。

精神障害者に対する死刑は国際法で禁じられていますが、実態には今までに何百人もの精神障害者が死刑執行されてきたと言われています。

3つ目は、裁判の実態が任意的で不公平であるということです。

たとえば、貧富の差で弁護士の質が異なり、被告人が不利に扱われていることなどがあります。

アメリカの毒投与台 (写真:CACorrections/Wikimedia Commons [Public Domain])

次にアメリカと同様、先進国の中でも死刑を採用し続けるマイノリティ側にある日本の実態を見てみましょう。

2020年は1年を通じて死刑が執行されませんでしたが、これは9年ぶりで、2020年末時点での死刑囚は110人います。

日本では死刑実行制度の不透明さが問題とされてきました。


1998年になって初めて死刑執行された人数が発表され、2007年になって初めて誰が死刑執行されたかが発表されるようになりました。

しかしまだ、死刑執行の時期が前もって発表されることはありません。

その時期の決め方も不透明です。

公に発表されていないだけでなく、死刑される本人でさえも、数十年間も待たされた挙句、直前に死刑執行を知らされるという場合が多いです。


さらに、代用監獄制度という問題もあります。

代用監獄というのは、本来は拘留決定後、法務省所管の拘置所に収容されるべき被疑者・被告人を、引き続き警察の留置場に収容することです。

法律上無くなったとも見える制度ですが、実態は変わっていなくて、この制度を利用して、警察が長時間の過酷な取り調べで被告人に自白を強要し、冤罪につながっていると言われています。


死刑に対する評価

ここまで各国の実態を見てきたがそもそも国はなぜ死刑を採用するんでしょう?

犯罪の抑止

1つ目の理由として犯罪の抑止という主張があります。

凶悪な犯罪を起こせば死刑にされる!と示せば、人々の犯罪を抑止できるっていう考え方ですね。

また、罪を犯したとされた人への報復としても考えられると思います。

でも、多くの研究結果では、実際には死刑が犯罪の抑止として機能していないことが明らかになっています。

たとえば、1988年と1996年に行われた調査では、死刑の方が終身刑より、犯罪の抑制として効果があるという科学的証拠がないということがわかっています。

そもそも、犯罪を抑止するのは、死刑や終身刑という刑罰そのものよりも、犯罪捜査や逮捕、有罪判決の確率を高めることにあるともされています。

刑務所の牢屋 (写真:Thomas Hawk/Flickr [CC BY-NC 2.0])

他にも、イランでは1959年以来麻薬関連の罪で何千人もの人々を死刑執行して来ましたが、麻薬犯罪は減っていません。

イラン当局自身も死刑制度はイランの麻薬問題を撲滅するのに機能していないと認めてしまっています。

麻薬犯罪に対してかなり厳しい取り締まりを行なっているシンガポールでも同様に、死刑は麻薬犯罪を抑止できていないという結果が出ています。

でも、みなさん、凶悪犯罪者が刑務所で生活するコストの問題があるじゃん!って思いませんか?

コスト

実は、犯罪者を終身刑として面倒をみるのにかかるコストの方が、死刑を執行するコストより小さいんです。

その理由は裁判の形態にあります。

死刑の宣告についての裁判は他の刑罰の場合と比べて、より慎重な判断が必要で、長い期間にわたって継続されることが多いです。

その分被告人の捜査や、陪審員の選出、陪審団や弁護士への給料に多くの費用がかかっています。

また、死刑囚を独房で監禁し、警備を強化することのコストも高いとされています。

また、実際に、死刑を採用することで、被告人の更生システムや犯罪防止、麻薬中毒の治療プログラムなどの分野にお金をかけられていないという問題も発生しています。

無実だった時

以上は、死刑がシステム的に機能していない点を挙げましたが、反対される理由は倫理的な面でもあります。

1つ目は、死刑された人が後に無実だとわかっても取り返しがつかないということです。

アメリカでは1973年以来160人以上の死刑宣告人が無実である証拠が見つかったことを理由に釈放されています。

釈放されていたらまだいいんですが、実際に無実なのに死刑が実行された場合もたくさんあるんです。

2010年ジュネーブで行われた死刑反対に関する国際会議に各宗教の関係者が出席 (写真:World Coalition Against the Death Penalty/Flickr [CC BY-SA 2.0])

正義といえるか

2つ目に、人間の命の価値です。

どんなに凶悪な殺人を行ったとしても、その罰としてその被告人の命を奪ってしまってはならないという考え方です。

全ての人間に生きる権利があるという人権を尊重した考え方でもあります。

また、死刑に賛成する理由として、報復という面もあると言いましたが、人を殺してはいけないということを、人を殺すことによって示すということは正義なんでしょうか?

他にも、死刑が採用されることで、国家によって人を殺すことが正当化されるようになり、社会も政府も残忍化されてしまうという考え方もあります。

死刑反対派の運動・対策

以上のような理由をもとに、EUは死刑に強い反対の姿勢を見せています。

実際、1982年のヨーロッパ会議では、ロシア以外の当時のEU全加盟国が死刑廃止に批准しました。(現在ではロシアも死刑を廃止しています。)

日本アメリカにも死刑を廃止するよう要求しています。

また、国連も1989年に初めて、世界全体で死刑を廃止するよう要求しました。

その後も国連総会で、死刑を採用する国に対して、死刑執行の一時的禁止を要求する決議を数回採択しています。

2020年の決議では加盟国中123カ国が支持し、史上最多の支持で承認されました。

2010年ジュネーブで行われた死刑反対に関する国際会議 (写真:World Coalition Against the Death Penalty/Flickr [CC BY-SA 2.0])

コラム

死刑について、みなさんはどう考えますか?

現在では死刑廃止国は106カ国と世界の多数派ですが、アムネスティー・インターナショナルが活動を開始した1977年当時は16カ国だけでした。

他の国では死刑はどんどん廃止されていますが、日本は死刑廃止したいと考えてる人ってまだ1割もいないんです。

たしかに凶悪犯に大事な人が殺されたのに、殺した人はのうのうと生きてるって考えたらいやだなって思ったり、社会に出てきてまた同じことされたらこわいっていう気持ちはありますよね。

でも、えん罪の可能性がゼロではないことや、死刑制度があっても凶悪犯罪の抑止にはならないことを考えると、制度としては効果的なものとはいえませんよね。

そしてそもそも人が人を殺していいのかってことは、もう一回よく考えるべきかもしれません。

たしかに、日本の死刑制度ってけっこう情報開示されていないな、と思いました。

本のリンクも文中ちょくちょく貼ってみたので、気になった人はこの機会にちょっと読んでみてください。


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