クラスター爆弾の使用:日本企業も製造・融資に関与!?

みなさんこんにちは、コクレポです。

ロシア・ウクライナ紛争において、ウクライナがアメリカに対し、クラスター爆弾の提供を要求し、アメリカがそれを検討していることが、2022年12月に明らかになりました。

ウクライナがこの紛争においてクラスター爆弾を使用してきたことについて、日本ではほとんど報道されません。

一方、ロシアがウクライナに対し、クラスター爆弾を使用したときには、強く批判されています。

同じものであるにも関わらず、この2つの事例を見ると、扱いの違いがみられるクラスター爆弾

この兵器とは、いったいどのようなものなんでしょうか?

地面に転がる不発弾、イラク(写真:Cluster Munition Coalition / Flickr [CC BY 2.0])

クラスター爆弾について

クラスター爆弾とは、1つの親爆弾の中に数多くの子爆弾を含む兵器です。

発射されると、空中でこれらを放出し、広範囲に無差別な攻撃を与えます。

第2次世界大戦において、初めて使用され、それ以降、20カ国以上が使用してきました。

アメリカは、カンボジア、ラオス、ベトナム、アフガニスタン、イラクなどで大量に使用しています。また、2006年には、イスラエルがレバノンで大量に使用しました。

実はこの爆弾について、生産、所持及び使用を禁じる国際条約が存在します。

この兵器から放出される子爆弾の中には、不発弾となるものも多く、地雷と同様に、紛争終了後も爆発する危険が継続します。

つまり、軍人と一般市民、そして戦時と平時の区別なく被害をもたらすんです。

被害地において、紛争終了後も、不発弾を玩具と間違え、拾った子どもが犠牲となるといった被害や、住民が畑や土地を自由に利用することを妨げ、戦後の復興に遅れを生じさせるといった被害をもたらし続けます。

1960年代半ばから2021年末までの統計によれば、クラスター爆弾の不発弾による死者数は、直接の死者数の約4倍に達しています(※)。

※ 1960年代半ばから2021年末までのデータで、全世界のクラスター爆弾による総死傷者数23,082人のうち、クラスター弾攻撃による直接の死傷者が4,656人、不発弾による死傷者数が18,426人。

このような特質から、クラスター爆弾の生産、所持及び使用を禁じようという国際的な動きが起こりました。

まず、2006年11月、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)でクラスター爆弾を規制することが話し合われましたが、アメリカやロシアをはじめとする保有国の反対により、合意に至りませんでした。

これを受け、1999年に条約によって禁じられた対人地雷を踏襲する形で、ノルウェーなどの有志国やNGOが主導して新たな条約作りを進め、2008年にクラスター爆弾禁止条約が採択され、2010年に発効しました。

この条約は、通称オスロ条約と呼ばれています。

2022年8月1日時点で、110カ国が加盟し、13カ国が署名しています。

2010年にこの条約が発行されてから、2023年の時点で、加盟国によるクラスター爆弾の新たな使用やその疑惑は、確認されていません。

加えて、非加盟国にも使用をためらわせる効果や、クラスター爆弾関連企業への投融資を規制する国際的な風潮を生み出す効果をもたらすなど、この条約は一定の成果を挙げました。

しかし、2022年8月時点で、アメリカ、ロシア、中国、インドなどを始めとする複数の保有国が未だに非加盟であり、これらの国々による使用や、使用の可能性は依然として問題となっています。

足を失った12歳の少年、レバノン(写真:luster Munition Coalition / Flickr [CC BY 2.0])

禁止条約発効以降の使用について

2010年8月にクラスター爆弾禁止条約が発効して以降、加盟国による使用はこれまで確認されていませんが、非加盟国であるタイ、リビア、シリア、スーダン、南スーダン、ウクライナ、サウジアラビア、アルメリア、アゼルバイジャン、ロシアが使用してきました。

これらの国々によってクラスター爆弾が使用された場面について、順に見ていきましょう。

2011年2月、タイがカンボジアとの国境紛争において、カンボジアに対し、クラスター爆弾を使用したと報告されています。

2011年、2014年、2019年に、リビアでクラスター爆弾が使用されました。

2011年には、ムアンマル・アル=カダフィ派政府軍側が、反対勢力に対してクラスター爆弾を使用したことが明らかとなっています。

カダフィ政権崩壊後の2014年12月以降には、国内の少なくとも2箇所で、クラスター爆弾が使用されたことを示す証拠が見つかっていますが、使用者は確定できていません。

さらに、2019年には、反暫定政権である「リビア国軍」所属の部隊による、複数の使用事例や使用された可能性がありました。

シリアでは、2011年から現在まで続く紛争において、2012年半ばから、シリア政府軍または、それを支援するロシア軍がクラスター爆弾を使用し、2022年にも使用が確認されています。

さらに、2014年後期、シリアの一部を占領していたIS(イスラム国)、クラスター爆弾を使用したことが分かっています。

2012年2015年、スーダン政府軍が、反政府勢力との戦いにおいて、クラスター爆弾を使用しました。

スーダン政府は、クラスター爆弾禁止条約の交渉過程や採択にも参加しており、過去に署名する意思も明言していますが、未だ(2023年1月時点)未加盟です。

2014年、紛争下の南スーダンにおいて、クラスター爆弾が使用されました。

使用者は特定されていません。

2014から2015年の紛争において、ウクライナ政府軍と、ロシアが支援するウクライナ反政府軍の両軍が、ウクライナ東部でクラスター爆弾を使用しました。

イエメン紛争において、2015年から2017年にかけ、サウジアラビア連合軍が、イエメンのフーシ派軍に対する空爆で使用したことが明らかとなっています。

2020年、ナゴルノ・カラバフ地域を巡る紛争で、アルメリアとアゼルバイジャンが使用しました。

2022年2月にロシア・ウクライナ紛争が勃発して以降、ロシアウクライナの双方が、クラスター爆弾を使用しています。

クラスター弾に関する条約の10回目の会議(写真:Cluster Munition Coalition / Flickr [CC BY 2.0])

未だに保有・製造されるクラスター爆弾・日本企業による融資も

このように、その無差別性や被害の長期性から、使用が問題視され、禁止条約もあるクラスター爆弾ですが、禁止条約に未加盟の多くの国々は、未だに保有を続けていて、締約国のうち一部の国も、破棄を完了していなません。

日本はどうなんでしょう?

クラスター爆弾を保有してきた日本は、クラスター爆弾禁止条約に、作成段階から関わり、2008年12月に署名、2009年7月に批准しました。

2015年2月までに、それまで自衛隊が保有していたクラスター爆弾の処分を完了しています。

しかし、日本は、在日米軍による持ち込み、使用を認めています。

日本は、禁止条約の規制に反対するアメリカによる働きかけに応じ、条約作りの中で、在日米軍の活動に影響しない条文にするための交渉を行い、それに失敗すると、会議において、独自の条文解釈を一方的に宣言しました。

これにより、在日米軍は、引き続き日本にクラスター爆弾を持ち込み、使用できるようになったといいます。

このことは、内部告発サイトである「ウィキリークス」によって公開されたアメリカの外交公電によって明るみに出ました。

保有の裏には、製造があります。

禁止条約の非加盟国のうち複数の国が、今なおクラスター爆弾の製造を行っていますが、製造の可能性を残したままです。

その製造は数多くの企業によって行われていて、また多くの金融機関の融資がそれを支えています。

過去には、日本の金融機関である第一生命、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、オリックスの4社も、製造企業への投融資に関わっていました。

さらに、2017年には、日本の公的年金を運用する機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、クラスター爆弾製造企業の株式を保有していることも明らかとなりました。

この法人は、2021年3月時点でも、製造企業・過去に製造していた企業の株式を保有していることが分かっています。

コラム

全体として、日本または欧米で「敵視」され、善悪のストーリーの中の「悪役」とされているロシアやシリアといった国による使用を多く報道し、逆に、日本政府と親しい関係にあるサウジアラビアがイエメンで使用しても、ウクライナが使用しても、注目や批判がほとんどされていません。

また、日本政府があまり強い関心をもっていないと言えるスーダンやリビアなどでの使用も注目されていません。

でも、クラスター爆弾のような兵器を「非人道的」なものとして扱うのなら、誰が使用したとしても、同じ様に「非人道的」なものとして扱う必要があるのではないでしょうか。

このように偏った報道は、世界の実情を伝えられないし、間接的に紛争の一方国への肩入れとして捉えられてしまうのではないでしょうか。

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