世界の飢餓の現状:過去5年で最悪 どこの国?原因は?東京栄養サミット2021

みなさんこんにちは、コクレポです。

明日12月7日から8日にかけて、東京で世界の栄養不良対策を議論する「東京栄養サミット2021」が開かれます。

そこで今回は、食料不足の実態やその要因、食料システムの問題点をみてみましょう。

世界の概況

世界には全人口分の食料を賄うのに十分な食料が存在していますが、飢餓に苦しむ人々も多く存在しています。

2020年の飢餓は絶対値、比率ともに急増し、人口の増加を上回りました。

FAOが出している報告書によると、世界的な飢餓は、コロナで増え、2020年には世界の10人に1人(最大8億1100万人)が飢餓に直面したとされています。

地域別に見ると、数では、世界の栄養不足の半分以上がアジアで、3分の1以上がアフリカです。

蔓延率で比べてみると、アフリカが一番高く、21.0%と、他の地域の2倍以上です。

さらに男女で比較した場合では、女性の方が蔓延率が高いです。

また、食料危機に関する報告書によると、食料危機レベルが5段階で3以上の国(IPCレベル3) (緊急支援を必要とするレベル) の人数は過去5年で最悪になりました。

IPC3以上の絶対数ではコンゴ民主共和国、アフガニスタン、人口比率でいうと南スーダン、アフガニスタンが世界でも最も深刻な国となっています。

飢餓の中でも最も深刻な飢きんのような状態(IPCレベル5)にあるのはイエメン、マダガスカル、エチオピア、南スーダンです

食料不足の原因

以上のように食料不足の事態は深刻です。

ではなぜそのような事態が起きてしまっているのでしょうか。

GRFC 2021によると、2020年で特に大きな要因として挙げられるのは、武力紛争と気候変動、経済危機(コロナを含む)でした。

GRFC 2021 より

武力紛争

その中の最も大きな要因として武力紛争が挙げられます。

世界全体で食料不足の危機的状況にある人々の内の過半数が武力紛争によって食料不足の状況に陥っていて、この人数は2018年から増えています。

というのも、紛争下において、人々は農業を営むことができなくなります。

畑を離れざるを得なかったり、種・肥料・農薬などの入手が困難になったりするからです。

さらに地雷や不発弾が埋められたままでは土地を耕すことができないという問題もあります。

また農業従事者でなくても、紛争で、人々は仕事ができなくなったり、所得を奪われたりします。

さらに食料の価格が高騰することもあります。

その結果、食料があっても、入手すること自体が難しくなってしまうんです。

経済危機

さらにコロナで2020年から大きな原因となっているのが経済危機です。

コロナで国内経済活動は大幅に抑制され、多くの人が収入が減り、 仕事を失いました。

特に社会保障が薄いインフォーマルセクターで働く人々に大きな打撃となりました。

コロナによるサプライチェーンの遮断で食料価格も上がり、輸入に頼る国はインフレ率の上昇の影響も受け、食料アクセスは悪くなりました。

国家による統治が弱い国や、紛争が起きている地域は特に経済危機による影響を受けやすいです。

コロナ感染による死亡者数よりも、その影響を受けて飢餓に苦しみ死亡する人々の方が多いとも言われています

気候変動

次に大きな要因として挙げられるのは気候変動です。

干ばつや洪水などの異常気象が作物や家畜に直接的に影響を与え、場合によっては収穫に壊滅的な被害が出ます。

こういった影響は特に小規模な自作農家にとって深刻です。

異常気象によって受けた被害から回復するための資金がない場合が多いからです。

降雨に依存する牧畜家にとっても気候変動による被害は深刻です。

またアジアの多くの地域ではヒマラヤの氷山からの表面流水を農業に使用していて、その表面流水は毎年氷山の氷の増加によって補充されていました。

しかし、現在はその補充よりも早いペースで氷が溶けていて、農業用水の減少が問題となっています。

他にも、収穫量が減少することで食料の価格が上昇するという問題もあります。

干ばつの被害(写真:Meryll/ Shutterstock.com)

システム上の問題

ここまで、食料不足を引き起こす直接的な要因について触れてきましたが、そもそもなぜ食料はこれほどまでに環境や経済の変化の影響を受けやすいんでしょう?

それには世界の食料システム上の問題が考えられます。

食料危機の構造的な要因を探ってみましょう。

そもそも世界には慢性的な格差および貧困問題が続いていて、それが食料安全保障にも大きく反映されています。

でもそれだけではなく、グローバル化によって、世界の食料システムがつながっていることも、食料の格差を引き起こす要因となってしまっています。

というのも、食料システムがグローバル化されたことにより、地産地消が減少し、世界規模で売り手と買い手がつながりました。

それによって、食料の価格は世界レベルで変動してしまいます。

この価格の変動の背景には為替変動以外に、資産家による投機の問題もあります。

金儲けのために、資産家が大量の先物取引を行うことで、価格が変動してしまうためです。

食料の価格そのものが高くなると、慢性的な貧困状況にある人々にとって食料を入手することはなおさら難しくなります。

とうもろこしの収穫(写真:United Soybean BoardFlickr [CC BY 2.0])

次の問題点として、低所得国における自給自足用の食料の不足が挙げられます。

本来、農家は作物の多様化を推進し、土壌・水・森林の保護に努めながら、生産地のための食料を作るシステムの方が、生産性が高く、公平で、持続可能性です。

でも、高所得国や投資家、民間企業が土地や人件費などの安さに着目して、このような国で商業的農業の展開を進めてきました。

輸出が増えたことで、ある程度の経済成長が見られる場合もありますが、利益の多くは外資系企業にとられてしまう傾向にあります。

また、生産地用の食料の生産が減少するため、最終的に食料不足が悪化することもあります。

その一例が、2012年に発足された、「アフリカにおける食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス(The New Alliance for Food Security and Nutrition in Africa)」です。

これはG7とアフリカ地域の10ヶ国、高所得国の大手農業企業による共同の取り組みで、アフリカの農業に投資することによって、アフリカの食料不安を改善しようという目的で発足されました。

でも、実際は高所得国による政府開発援助(ODA)や外資系企業による投資を増やす見返りとして、現地政府はこれらの企業を優先するような政治改革を推進するよう求められるなど、その現地の食料問題を改善させるどころか、むしろさらなる食料不安を助長するものでした

そのような批判の声が上がり、G7の全体のプログラムとしては徐々に姿を消したものの、現在もG7各国の政策に同じような傾向が見られます。

またこのようにして強化された輸出用の作物は、バイオ燃料や牧畜用のエサのために多く使われ、人間が食べる食料が不足しているという問題もあります。

また一方で、高所得国は食料を輸入しているにも関わらず、大量の食料を捨ててしまっているという問題点もあります。

バナナを運ぶ女性(写真:Dietmar Temps/ Shutterstock.com)

さらに、作物の品種の多様性が失われているという問題もあります。

少数の作物に依存すると、気候変動や害虫の影響を受けた場合に、壊滅的な被害を受けやすくなります。

人間が食べることができる植物は30,000種類にも及ぶと言われていますが、実際にはそのうちの150種類しか食べていないとされています。

例えば、同じとうもろこしやバナナでも限られた品種のみ大量に作られてしまっているという実態があります。

このように少数の種類の作物に依存してしまった理由は、数少ない農業関連企業に集中してしまったことが挙げられます。

また、さっきのアフリカのための「ニュー・アライアンス」も関連しています。

この取り組みには現地政府における政治改革として、企業による農業への介入を自由化するものも含まれていて、その企業によって特許付きの種を普及しやすくされました。

コラム

グローバル化が進み、世界で食料自給率が低い国も多い中、世界の食料問題は決して他人事にできる問題ではありません。

この危機に対して、短期的な政策ではなく、抜本的な食料システムの改革が行われる必要があるのではないでしょうか。

だからこそ、表面的な問題だけでなく、背景や根本的な問題について多くの人に知ってほしいなと思います。

フェアトレードの問題の記事や、私たちが普段食べてるアボカドエビチョコレートの問題の記事もぜひ読んでみてください。

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