みなさんこんにちは、コクレポです。
みなさん、エビは好きですか?私は大好きです。
でも、アメリカ、日本、ヨーロッパの食卓に並ぶ多くのエビは、東南アジアで奴隷として働かされている人々によって作られているかもしれないことを知っていますか?
2014年、タイ漁船での人身売買や強制労働の実態が報道され、タイ本籍地の大手食品会社CPフードが、カルフール、コストコ、テスコ、ウォルマートなど、世界の主要スーパーマーケットに海上奴隷によるエビを供給していたことが判明し訴訟が起きるなど、海外では東南アジアの海上奴隷問題が大きく注目されました。しかし現在、この状況は改善されたのでしょうか?
今回は、おいしいエビの裏に隠された、海上奴隷の問題を解説したいと思います。
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海上奴隷の実態
タイは世界最大のシーフード輸出国の1つで、2018年のイワシ、エビ、イカなどのシーフード輸出額は60億米ドル(タイ輸出総額は約2400億ドル)もあるため、漁業はタイにとって主要な産業です。
しかし多くの業者は、東南アジアの他の貧しい国からの移民労働者を人身売買し、奴隷のように働かせてコストを安くすることで、大量に世界に輸出しているんです。
タイの漁業セクターにはおよそ60万人の労働者がいて、その約半分が移民労働者であると推定されています。

タイの漁船で海上奴隷となる人々は、タイよりさらに貧しい隣の国のミャンマー、カンボジアからの移民労働者であることが多いです。
ミャンマー西部ラカインタ州のロヒンギャなど、国から迫害を受けていたり、生活を立てるためのお金もなく、貧しい生活状況にいる人たちに、海上奴隷の仲介となる人がやってきます。
「いい仕事があるからおいで。」
そして、偽物の外国や遠方労働場所への渡航書類を渡され、船に乗り込みます。
しかし着いた先は契約内容とは異なる環境で、船上で長時間過酷な労働を強いられることになります。
充分な食事はもらえず、不潔な水を飲むよう強制され、ひどい場合は休む間もなく1日20時間も拘束されて働く人もいます。
エビの皮むきは、子どもが関与していることもあるんです。
また、船上のため人目に見つからず、脱出することもとても難しいです。
22年ぶりに労働から救出された事例もあり、契約が噓だったとわかっても逃げることができず、家族と引き離されて長い年月を船上で過ごす被害者は多いんです。
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世界のバッシング
2014-2015年、この東南アジアの海上奴隷問題が報道され、アメリカはタイ、インドネシアの海産物をふくむ350品目以上の奴隷による生産物の輸入禁止を決定するなど、タイ水産業は世界から大きなバッシングを受けました。
初めは対策に乗り気でなかったタイ政府も、このような大きな国際バッシングを受け、船のパトロールを行ったり、国連機関であるILOと協力し、搾取や人身売買を禁止する労働法を海にも適用できるようにしたり、船に違法な労働者がいる場合、40万から80万バーツ(140万円から280万円)の罰金+漁業免許の没収など、かなり厳しい規則も入れられました。
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法の抜け穴・なくならない強制労働
これらの取り組みで、状況は以前より改善はしたものの、いまだ根絶することはできていないんです。
タイの労働大臣は、漁業部門にはもう人身売買はないと主張しているんですが、最近のILO報告では、そうではないことが明らかになっています。
以前は、暴力によって、移民労働者を船に乗せ続けるという強制労働のやり方が一般的でしたが、最近では、不法にオーナーが労働者のATMカードを管理したり、賃金を管理することで、彼らが辞めることができないようにしています。
逃げたくても、自分のお金を船のオーナーが持っているため、借金を抱えている労働者たちは、逃げることができないんです。
また、労働者のパスポートや身分証明書をとりあげ、オーナーが保管して逃げさせないようにすることもあります。
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人身売買を阻止するためのイニシアチブの一環として、タイ政府は2015年から、GPSトラッカーを使用して海上で船を監視し、タイの港に停泊する漁船を検査して、契約・規則が守られているかチェックを始めました。
しかしこれらの検査では、船長や船のオーナーと話し、文書を確認するだけで、移民漁業者へのインタビューは行われず、この検査で労働虐待が特定されることはめったにありません。
そのため単なるパフォーマンスだと非難されています。
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また、タイ政府は海外での漁業にも制限を設け、タイ籍船の漁船は、海上で30日以内にタイの港に戻らなければならないようにしました。
ただし、これらの規制は、その国に登録されている漁船にのみ適用されます。
そのため、一部のタイの船は、精査が少ないミャンマーで名前を変更し、海軍や当局に賄賂を贈って、本来の期限より長い期間働かせたり、モンゴルのように海事規制がほとんどない国籍の船に変更し、アフリカの近くで漁業を行っていることもあります。
しかし、タイで登録された船が海外で販売され、労働者がこれらの船で働き続けることは違法ではないんです。
取引された船舶を追跡することは難しく、乗船中の移民労働者たちは十分な食料がない状態で3か月間働かされ、飢え死にしたり、海に飛び込み自殺してしまう人もいます。
また、これまで何百人もの移民が解放されましたが、長年船で強制労働させられていた人たちは漁業以外のスキルがなく、大多数が、違法な漁船で再び働く可能性があるといいます。
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コラム
私の家族はコストコのエビが大好きで、小さいときよく買って食べていましたが、こんな深刻な問題があったとは全く知りませんでした。
2014年にAP通信が長い調査を経て、世界に報道し、この実態が暴かれたことで、企業や輸入国政府が動き、その結果、輸出国側の政府も動き、取り締まりが始まって以来、何百人もの移民が解放されました。
これってすごいことですよね。
調査報道のひとつの大きな成功例だと思います。
この海上奴隷問題は、先進国は安いモノを安い地域から仕入れたい。
タイは安く売るため、さらに人件費の安い近隣国の移民を使う。
という、先進国と東南アジアの経済格差、タイとその他の近隣国との経済格差のダブルの格差構造が生み出したものです。
タイ企業やタイ政府は、企業利益、国家利益のために、なかなか労働制度の取り締まりを厳しくしたくないでしょう。
でも、世界に目を向け、人々が知り、先進国側の企業や政府も責任を知って行動することで、状況を改善することができます。
まだなくなっていない海上奴隷問題に、これからも私たちは注目している、というプレッシャーを与え続けていくことが大切だと思います。
皆さんの考えも、ぜひコメント欄で教えてくれるとうれしいです。