環境保護者の殺害が増え続けてる!?200人以上死亡の裏側

みなさんこんにちは、コクレポです。

今、世界中で環境保護者の殺害が増え続けているのを知ってますか?

2020年には世界で227人が環境保護活動を原因として殺害されました(※1)。

また、その約4分の3がラテンアメリカで起こっています。

一体なにが原因なんでしょう?

その原因と各国の背景、そして彼らを守る為の対策について詳しく探っていきます。

2016年にホンジュラスで殺害された環境活動家ベルタ・カセレス氏の写真を掲げ、権利を訴える環境保護者(写真:Comisión Interamericana de Derechos Humanos / Flickr [CC BY 2.0])

世界で起こる環境保護者の殺人の増加

毎年、環境保護や先住民の権利、人種やジェンダーに関わる人権などの擁護を訴える人権擁護活動家たちの殺害が発生しています。

2020年には、25カ国で331人もの人々が殺害されました。

そして、その約4分の3を環境保護者が占めています。

(ここで言う環境保護者とは、自然環境を生活圏にしている住民や、自然環境を軸に活動している市民団体や個人、森林警備員、生物学者など、川や湖、森林や、そこに住む生物をあらゆる損失や破壊から守ろうとする人々のことです。)

これらの環境保護者の殺害事件は年々増加していて、現在の発生件数は2013年の約2倍 となっています。

ではなぜこのような殺人が世界中で起こり、増加を続けているんでしょう?

それは資源開発を進める様々な企業や組織または個人が、環境保護者と衝突することが大きな原因の1つです。

現在、世界中で密猟や農業、林業、鉱業、水力発電などのための土地開発や資源採掘が進んでいて、自然豊かな地がその対象になることが多いです。

このような意見の対立の中で、環境保護者が暴力の抑圧の対象となり被害を受けています。

もう1つ、大きな要因があります。

それは、殺人犯が検挙されることなく、見逃されるケースが多々あるということです。

このようなことが起こる要因として、政府と企業との間の癒着が考えられます。

また、首謀者を特定することが難しい場合も少なくありません。

例えば、企業や地主が殺害を命じ、殺し屋や暴力団が実行するというケースもあります。

さらに、脆弱な国家体制や紛争の下で、警察や軍人、ギャングや武装勢力などが殺人に関わることもあります。

そのため、事件の詳細が不明のまま、殺害された環境保護者たちが単なる紛争の被害者として扱われ、司法上の事件として扱われない場合もあるんです。

ブラジルで進む土地開発(写真:Coordenação-Geral de Observação da Terra / Flickr [CC BY-SA 2.0])

ラテンアメリカの背景

増え続ける環境保護者の殺害は特にラテンアメリカで多発しています。

最も環境保護者の殺害が酷い10か国のうち、7か国がラテンアメリカに集中していて、2020年には計165件の殺害が記録されました。

同年の各国の殺害件数は、コロンビアが最も多い65件、メキシコで30件、ブラジルで20件と続きます。

そのほかの国でも、ホンジュラスで17件、グアテマラで13件、ニカラグアで12件、そしてペルーでは6件といったように多くの殺害が発生しています。

なぜこれらがラテンアメリカに集中しているんでしょう?

ラテンアメリカの歴史的背景からその理由を探っていきましょう。

ラテンアメリカに人類が渡ったのは1万2千年以上前と言われ、それはアジアからの人々だったとされます。

そこでは、様々な帝国やその他の政治体制が作り上げられ、特にアステカ帝国(現在のメキシコ)、インカ帝国(現在のペルー、ボリビア、エクアドル、チリ)などが大きな影響力を持つようになりました。

しかしながらスペインとポルトガルの侵略を機に、16世紀以降長い植民地支配を受けることとなります。

先住民たちは土地を奪われ、地主や少数のエリート層の下で働かされました。

19世紀に多くの国が宗主国から独立しても、各国の少数の支配層に先住民達が準ずる状況は変わりませんでした。

そして支配体制の変化を望まない入植者たちによって、先住民の弾圧・抹殺が図られました。

加えて1900年以降からは、ラテンアメリカに眠る豊富な資源を狙った国内外の企業や地主が多く参入するようになり、土地の権利回復を目指す先住民の立場は苦しくなる一方でした。

また土地の管理において、ラテンアメリカ諸国では各国の大規模な多国籍企業、裕福なエリート層と政府、警察、メディアとの癒着があります。

土地を巡る先住民の権利を考慮した保護地域が設置されることもありましたが、自国の土地を公正に統治することができているとは言い難いです。

例えば、ペルーのアマゾンの土地の約31%は、石油とガスの利権のために政府が管理しています。

加えて、武力紛争などにより治安の悪い地域では、環境保護者の殺害が助長されるという問題もあります。

ラテンアメリカでは、冷戦の一環でアメリカとソ連との対立が紛争の激化につながった地域が少なくありません。

また、コロンビアやボリビア、ペルーが麻薬の生産地で、その麻薬が中米やメキシコを経由して北米に密輸されていくことから、それに関連する暴力団・犯罪組織が大きな力を持っていることが治安の悪化を招いています。

ラテンアメリカ全体での先住民の立場の弱さ、政府の脆弱性、治安の悪さといった様々な要因が、ラテンアメリカの殺害数の増加に影響を及ぼしていると考えられます。

ブラジルでのダム開発に抗議する先住民達(写真:Friends of the Earth International / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])

各国の具体的な現状

ここまで環境保護者の殺害が増えてる背景にはどのようなものがあるんでしょう?

殺人数が特に多いコロンビア、ブラジル、メキシコ、ホンジュラスについて順に分析していきます。

コロンビアは環境保護者の殺害率が最も多い国です。

この国は何年もの間武力紛争が起こっていて、環境保護者にとって危険な国でしたが、2016年の政府とコロンビア革命軍(FARC)反政府勢力との間の和平合意以降、一旦殺害件数が減ったものの、再び状況が悪化しました。

首都ボゴタに拠点を置くコロンビアの平和構築非営利団体インデパズ(Indepaz)によると、コロンビアでは2020年に65人の環境保護者達が殺害されました。

これは同年の世界での環境保護者の殺害数の約3分の1を占めます。

コロンビアでの殺人の多さには、歴史的背景が深く関係しています。

植民地時代から独立後にかけて、広大な土地が地主や国内外の企業に渡ることで、農民と地主との間に格差が拡大されていきました。

その不平等を是正すべく、農民とその土地で働く者達によりFARCが創設され、52年もの間政府と対立を続けていました。

この紛争の中で、コカインの生産と密輸に関わる犯罪組織やその他の資源の採掘業者が政府関係者や、紛争当事者と手を組み、土地権利の獲得、開発を進めました。

2016年に和平合意がなされましたが、FARCの武装解除・撤退に伴い、それまでの統治に穴が生まれてしまいました。

その中で犯罪組織や採掘業者が活発化を始め、これらのグループに環境保護者達が狙われる傾向がさらに強まりました。

さらにもう一つの要因として、新型コロナウィルスのパンデミックがあります。

上記の犯罪組織や武装集団がパンデミック対策という名目で独自の検問所などを作り、自分達にとって不都合な環境保護者達に危害を加えやすくなっています。

ブラジルでは2017年に57人もの環境保護者が殺害され、その年には世界で最も多かった件数となりました。

ブラジルには広大なアマゾンが広がり、約80万の先住民と国土の約12%を占める保護域が存在します。

環境を守ろうとする住民に対して、この地域を資源の対象として見ている企業や個人による侵攻が以前から問題になっていました。

でも、2019年にジャイール・ボルソナロ氏は大統領に就任して以来、環境保護者に対する迫害の傾向を強めています。

同政権は、この地の資源を活用しようとする者を後押しし、農業、林業、鉱業をめぐる開発計画を推奨しています。

さらに、先住民の土地を違法な侵入者たちが利用することを免罪する法案を作成しました。

大統領自身が不法行為を推奨していることで、環境保護者達への、土地を利用しようとする者達による迫害、暴力行為が増加していると考えられます。

ブラジルの森林で開発されている鉱山(写真:Dennis Jarvis / Flickr [CC BY-SA 2.0])

次にメキシコを見てみましょう。

メキシコでは2012年から2019年に少なくとも83人の環境保護者が殺害されています。

この国での殺人の増加の要因の一つは2014年のエネルギー改革です。

この改革は民間投資が禁止されてきたエネルギー産業を自由化するというものです。

これにより適切な協議や補償なしに、多数のエネルギープロジェクトが地方や先住民のコミュニティの存在する地で進められるという事態が起こりました。

故に、この改革が殺人の増加の大きな要因とされていて、83人の内の約3分の1がそれらに関連して殺害されています。

またメキシコの特筆すべき点は犯罪組織に関連した殺害の多さです。

メキシコは南米の国々からコカインをアメリカへ密輸する中継地点となっています。

この密輸に関わる犯罪組織同士の対立が激化する中で、政府は2006年から軍事的手段を開始し、武力紛争へと発展していきました。

でも同時に、政府、軍隊、警察などにおける腐敗も増え、犯罪組織との協力もみられています。

殺害の背景には、犯罪組織、及び政府が後押ししている可能性のある林業や鉱業活動なども関わっていると推測されます。

メキシコの石油関連施設の様子(写真:Presidencia de la República Mexicana / Flickr [CC BY 2.0])

ホンジュラスでは2010年からの約7年間で、120人以上の環境保護者が殺害されています。

この国では、19世紀後半からアメリカの大企業による大規模プランテーションが置かれ、多くの人々が劣悪な環境で働き、富が少数のエリートや地主に独占され、独裁政治が続けられました。

20世紀後半には冷戦によって助長されることとなった武力紛争が発生し、治安が崩壊の一途を辿りました。

冷戦の終結とともに紛争が終わったものの、メキシコと同様に、麻薬貿易の中継地点となっていて、犯罪組織やギャングが大きな存在となっています。

また、政府と地主や企業との癒着も目立ち、資源開発と関連付けられている犯罪への対応がままなっていません。

例えば、水力発電ダム建設に反対した環境保護者や、鉱山に反対した環境保護者が殺害されるなどといった事態が発生しています。

殺人事件の多くが検挙されておらず、暴力行為を行いやすい状況が続いています。

環境保護、また環境保護者を守る試み

では、環境保護者に対する脅迫や暴力に対して、どのような対策がとられているんでしょう?

各国、各地域で環境保護者が市民団体を立ち上げており、それらを通じて、脅迫や暴力に対して企業、政府や他国に向けて抗議を行ったり、対策を要求しています。

また、これらの市民団体同士で力を合わせることもあります。

その代表的なものに「COICA」 (※2)という市民団体の連合があります。

国境を越えた先住民達の代表によって、アマゾンの環境を保護するべく設立されました。

その規模は拡大を続け、傘下組織は地域および国際レベルで先住民組織の利益を擁護し、その政治活動を支援しています。

COICAは先住民、及び環境保護者の依然として弱いままの立場を問題視していて、ラテンアメリカの国々に、環境保護者を守るための政策の採用、殺人の起こる可能性のある開発の中止などを求めています

また環境保護者が殺されている現状、及び彼らを守ることによって環境破壊を止めることの大切さなどを解いたビデオを世界に向けて公開するなど、様々な啓発活動も行っています。

加えてCOICAは2025年までにアマゾン盆地の5分の4を保護地域として宣言するよう南米9か国に求め、2021年にその宣言は圧倒的な支持を得て世界の環境保護活動に影響を及ぼす国際自然保護連合(IUCN)(※3)に可決されました。

土地が保護地域とされることは、その地に住む先住民の生活、環境保護者の活動を守ることに繋がります。

先住民による鉱山に関する会議の様子(写真:Friends of the Earth International / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])

非政府組織(NGO)として、環境保護者を守る活動も行われています。

長年に渡り、国際NGO「グローバル・ウィットネス」は世界中の環境保護者と関係を構築し、彼らに対する脅威をなくすことを目指し活動を続けています。

また、この問題に関する環境保護者による発信力をさらに高めるために、2020年に戦略的意識向上プログラム(SARP)を立ち上げました。

双方が連携し、ソーシャルメディアなどを用いて環境保護者が直面している明るみに出ていない問題を世界に広めます。

それにより世界からの関心を集め、殺害の抑止力となることを目指しています。

また国際NGOと現地NGOの連携として、「土地、先住民、環境を保護する人々の為の同盟」 (ALLIED)が挙げられます。

ALLIEDを通じ、政府や企業への環境保護者を守るための呼びかけ、環境保護者による自衛のための情報共有などといった活動が行われています。

また各国に対して、環境保護者を守ることの重要性などを説いています。

そして近年になり、遂に各国の政府同士が協力した試みもなされるようになりました。

2012年に、10か国によりラテンアメリカとカリブ海の環境問題地域協定「LAC P10」が宣言されました。

この協定は、環境保護に携わる人たちの保護、生活に影響する環境に関わる意思決定への市民参加の機会拡大、水質汚染や鉱山開発、森林伐採などの開発に関する環境情報への人々のアクセスの向上などを目指すものです。

これは、今まで環境保護者とは関係の無い所で決められてきた環境開発事業に、彼らの意思が反映されることにつながります。

それにより対立が少なくなり、環境保護者の殺害件数の減少が期待されます。

これを基にして、2018年、ラテンアメリカでの環境保護者を守ることを目的とした「エスカズ条約」が採択されました。

これは世界で初めて環境保護者を守ることが明記された条約です。

多発するラテンアメリカでの環境保護者の殺害を問題視し、彼らを暴力から守ること、また暴力を加えた者達に十分な法的措置を与えることなどが明記されています。

2021年、この条約はラテンアメリカ24か国の署名をもって発効され、12か国が批准しています。

エスカズ協定の署名(写真:Cancillería Argentina / Wikimedia [CC BY 2.0])

コラム

土地開発には大きな富と既得権益などが大きく絡んでいることから、環境保護の活動はとっても難しくて危険なんですね。

最近の研究では、環境問題に関連する紛争の11%で、環境保護者が環境破壊のプロジェクトの停止に貢献したことが示されました。

環境保護者の活動を守ることは、先住民の権利だけでなく、地球の環境を守ることに繋がります。

これらのような事件が関わってる資源はラテンアメリカ諸国から世界各地に輸出され続けています。

つまり、これらの資源の需要の増加も、この問題とつながっていると言えます。

でも、今まで見てきたように様々な対策がなされていることも事実です。

この流れが止まることなく、環境保護に関する取り組みが続いていってほしいです。

※1 この人数は、公に報告されている、かつ、環境保護活動とのつながりが確認されているだけの人数であり、実際の人数はさらに多いとされる。報告に含まれない理由としては、政府によって公にされない問題、司法の不平等性で事件として扱われない問題もあるが、言語の壁によって上手く事実確認が取れないこと、主流メディアによる報道の欠如のために、外の団体によって察知しにくい問題もある。

※2 アマゾン盆地の先住民組織のコーディネーター (Coordinadoradelas Organizaciones Indígenasdela Cuenca Amazónica)の略。1984年に、ペルー、ブラジル、エクアドル、ボリビア、コロンビアの5つのアマゾン先住民組織の代表によって、ペルーの首都リマで設立されたアマゾン盆地の先住民組織の統括組織。設立以来、先住民の権利を擁護してきた。

※3 本部をスイスに持つ国家的な自然保護団体。国家、政府、NGOなどが所属する。自然保護に関する国連条約や、国家条約の制定の後押しを行ってきた。

出典元GNV

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