気候変動で格差拡大?気候アパルトヘイトとは?

みなさんこんにちは、コクレポです。

みなさん、「気候アパルトヘイト(climate apartheid)」っていう言葉、聞いたことありますか?

アパルトヘイトは、南アフリカ共和国の人種隔離政策(※1)でしたよね。でも気候アパルトヘイトは聞いたことないな?っていう人が多いんじゃないでしょうか。

アパルトヘイトっていう言葉はもともと、「分離」「隔離」を意味する語で、南アの人種隔離政策は、黒人と白人が「隔離」されるから、この言葉が使われるようになったんですね。

気候アパルトヘイトは、気候変動によって、富裕層と貧困層が「分離」し、その結果、貧富の格差をさらに広げてしまう現象のことです。

といってもあまりピンとこないかもしれません。今回はこの「気候アパルトヘイト」をテーマに、気候アパルトヘイトの解説・気候変動の対策を十分に行えない途上国ではいまどんな問題が起きているのか、そしてトップ富裕層たちはどんな対策をしているのかをみて、この格差の問題の責任はどこにあるのか、いっしょに考えてみましょう。

気候アパルトヘイトって?

気候アパルトヘイトは、富裕層と貧困層との間で気候変動が引き起こすさまざまな問題に対応する能力が違って、「分離」が発生するのでこう名付けられました。

ここでいう富裕層とは、常にエアコンや丈夫な家、ライフラインや食糧へのアクセスがある先進国に住む人のことです。

もちろん自然災害はこれまでも常に存在していて、世界中で干ばつが起きていました。

重要なのは、そういった災害が激しくなっている、ということです。

前より頻繁に起きて、前よりも大きな被害をもたらしています。

干ばつも劇的に進んでいて、アフリカだけではなく、中東、インドなどでは人が移り住まなければならない状況が生まれています。

たとえば、アフリカの中央サヘル地域に位置するマリ、ブルキナファソ、ニジェールなどでは、紛争による混乱に加えて、これらの地域は世界平均よりも速いペースで気温が上昇していて、洪水や干ばつが頻発しています。

そのため食糧生産がなかなかできず、2019年の3倍にあたる約740万人が深刻な食料不足に陥っているんです。

また、2020年10月上旬から、フィリピン・ベトナムに大型台風が立て続けに襲来しました。

フィリピンでは80人が死亡または行方不明となり、14万棟以上の家屋が倒れました。

ベトナムでは413人の死者・行方不明者、4万人以上の避難者を生みました。

台風の上陸の頻度や勢力が増えていることで、一度被害を受けた人々が生活を立て直すことが難しく、その影響が特に大きい農業や漁業従事者は経済的に困窮してしまいます。

気候変動による海面上昇や砂漠化・異常気象のため、2050年までには1億5千万から2億人もの気候難民が発生すると予想されていて、2030年までに1億2千万人の人々が貧困に陥るという報告書も発表されています。

気候変動はこの50年における開発、保健、貧困対策などの進歩を巻き戻してしまう可能性があるんです。

気候変動の被害を逃れるためには、お金が必要です。

たとえば同じ規模の洪水が途上国と先進国で起きたとしましょう。

途上国ではその洪水で、学校や病院が壊れてしまいましたが、修復するお金がありません。そのため子どもたちは学校にも病院にもいけません。洪水で食料不足になり価格が高騰し、食べ物も手に入らなくなります。

先進国の場合は、そもそも洪水で壊れることがないよう頑丈な建物が作れますし、もし壊れても国や市がお金を出してすぐ立て直してくれます。食糧が値上がりしても手に入れることはできますよね。

このように、先進国ではちょっとのダメージで済む洪水ひとつでも、途上国で起きると教育・医療・食糧問題につながり、貧困を加速させてしまうんです。そしてその貧困のせいで気候変動への対策をとることができず、被害を真正面から被るんです。このようにして新しいアパルトヘイトが生まれてしまう、まさに負のスパイラルです。

ここで注目しないといけないことは、気候変動を引き起こしている温室効果ガスの排出量の半分は、世界で最も裕福な10%の人間によって排出されてきたものなんです。そして最貧層(総人口のうち35億人)が排出している温室ガスは、たった10%未満なんです。それなのに、気候変動が引き起こす被害を大きく受けるのは貧困層なんです。

気候アパルトヘイトのトップ層

このアパルトヘイトの中でも、大金持ちトップ層の気候変動対策はバッチリで、地下壕を建設したり、プライベートの消防隊を雇ったりしています。チェコ共和国には世界最大の地下壕「オッピドゥム」が建設されていて、大富豪専用の避難シェルターとして、地上が大惨事に見舞われても彼らの身を守ることができます。同じような避難所はドイツやアメリカなどにも建設されています。

オッピドゥム

また、2012年に大型のハリケーンがニューヨークを襲った際、多くの低所得者が電力や医療へのアクセスを断たれたなかで、大手金融グループのゴールドマン・サックス社の本部は自分たちで準備した土囊(どのう)や発電機によって甚大な被害を免れることができました。また、アメリカでは2018年に大規模な山火事が起こり、セレブのキム・カーダシアンはプライベートで消防士を雇い、自身の豪邸を大火から守れました

このように大金持ちは個人的に人を雇うことで、公共サービスが間に合わなくても、災害を生き延びることができるんです。

気候変動の責任

このような「気候アパルトヘイト」を止める方法はどんなものがあるんでしょうか。

具体的な対策としては炭素税が有効だといわれています。

炭素税というのは、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料に、炭素の含有量に応じて税金をかけて、化石燃料やそれを利用した製品の製造・使用の価格を引き上げることです。

再生可能エネルギーへの切り替えは、長期的に見ればコストの削減にも繋がるということがスタンフォード大学での研究で分かっていて、産業が再生可能エネルギーに移行することで、現在の化石燃料を使った体制よりも全体のコストを4分の1に抑えられるといいます。

しかし、2015年のパリ協定(※2)では2030年までに二酸化炭素の排出量を減らすという取り決めがされましたが、排出量は今も増えているのが現状です。

そして、先進国の企業・大富豪たちが気候変動に加担してきた責任を横目に、タックスヘイブンアンフェアトレードで、途上国をさらに貧困にさせ、この貧困のせいで気候変動の被害をさらに受けている、という悪循環があります。

コラム

私はザンビアに住んでいたとき驚いたことは、日常の友達との会話で、”Climate Change”という言葉が頻繁に出てくることでした。国内新聞紙にもしょっちゅう気候変動に関する記事が出ていました。日本で友達と気候変動っていう言葉が会話で出てくることってなかなかなくないですか?

ザンビアにいたとき、毎日15時間以上の計画停電が3か月くらい続くときがありました。雨が降るはずのシーズンになっても雨が降らず、水力発電で主に国の電気をつくっているザンビアでは、大きな電力不足になっていたからです。

また、世界3大滝のビクトリアフォールズが干からびたり、食料不足でたくさんの子どもが飢えで死んでしまったり、洪水で橋が壊れてもずっと直せず、学校や医療へのアクセスが閉ざされたりしました。

温室効果ガスをたくさん出している日本で暮らしているときは、台風がきても学校1日休みでラッキーとしか思わなかったし、夏の気温が上がってもクーラーの効いた部屋にいれば問題ありませんでした。

ザンビアは気候変動に影響を及ぼすような活動はほとんどしていません。なのになんでこんな毎日毎日大きな被害が出てるんだ。。ザンビアに住んで初めて気候変動の問題の重要性がわかったと同時に、世界は何て不公平なんだろう、と思いました。

気候変動の被害を真っ先に受けるのは途上国です。ただ「勝ち組」として生き残るのではなく、気候アパルトヘイトで苦しむ貧困層の損害を最小限にとどめるよう取り組み、コストを負担するのが先進国・富裕層の責任ではないでしょうか。

※1人種隔離政策:白人と非白人を分けて統治し、非白人を差別・隔離することなどを規定した政策。1948年から1994年まで南アフリカ共和国で行われていた。

※2 パリ協定:2015年、気候変動を抑制するため、多国間で具体的な数値による取り決めのもとで採択された。産業革命時と比べて気温上昇を2℃未満に抑えること、各国における2030年までの二酸化炭素排出量の削減目標などが設定された。

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