みなさんこんにちは、コクレポです。
なんで途上国はこんなに支援してあげているのにずっと貧困なんだろう?って思ったことありませんか?
今回は、世界の貧困の最も大きな原因である「不法資本流出」について解説したいと思います。
世界の貧困の最も大きな原因:不法資本流出とは?
といっても、この言葉が難しいですよね。
簡単にいうと、「貿易を通じて、途上国の利益が先進国に不正に流れている」ということです。
例を使って説明しますね。
例えば皆さんがお金を貯めたいとき、お母さんが毎月1万円ご褒美だよ!と渡してくれても、お母さんがこっそり皆さんの口座から毎月100万円引き出してたら、バイトをいくら頑張ってお母さんからご褒美を貰っていても、増えるどころか大損ですよね。
つまり、もし「流れていってしまうお金」があるなら、そこを止めないとお金は増えませんよね。
この例みたいなことがまさに途上国が貧困から抜け出せない原因なんです。
開発支援(ODA)の実態
貧しい国・発展途上国が貧困から抜け出すにはどうしたらいいんだろう、と考えるとき、「開発支援」「国際協力」「国際貢献」などを思い浮かべる人が多いですよね。
でも、この「支援」=「お母さんからのご褒美」の部分だけ考えていていいんでしょうか?
そもそも、この入ってくるお金(お母さんからのご褒美)=先進国による開発支援(ODA)は大きく不足していて、アメリカ、日本などの経済大国からの開発支援は、国連目標(国民総所得(GNI)の0.7%)の3分の1以下のままです。
また、その開発支援という名前でも、例えば途上国のインフラを整えましょう!助けましょう!というプロジェクトは、その先進国の企業が途上国で事業を行うので、もちろん途上国のインフラは整いますが、そのプロジェクトでお金を儲けるのはその先進国企業です。
つまり、先進国自身に戻ってくる「支援金」も多いんです。
不正流出額>支援額
持続可能な開発を実現するには貿易や投資こそが大切で「援助ではなく貿易だ」(“trade not aid”)という言葉も最近よく聞くようになりました。
その貿易が売る側、買う側の両方に利益をもたらすwin-winの状況であればいいですが、実際のところは、貿易を通じて最貧国・発展途上国から大きな利益が不正に流出してしまっているんです。
途上国で活動する多くの先進国企業は、納税を抑えるためにさまざまな方法を使っています。
タックスヘイブンとは:不正な貿易価格設定
その典型例がタックスヘイブンを使う方法です。
皆さん、タックスヘイブンって名前は聞いたことあるしなんか悪そうだけど、何が問題なの?っていう人多いんじゃないでしょうか。ここでは例を使って分かりやすく説明します。
例えば、銅を採掘する先進国日本の外資系企業A社が、鉱物の銅が豊富にある貧困国ザンビアで、銅採掘プロジェクトを行ったとします。
A社は、日本で相場価格で売るとその銅は1000万円の利益がでることを知っていますが、そうするとザンビアの税率10%の100万円と輸出にかかる関税10%の100万円をザンビアに払わないといけないので、もっと安くコストを抑えたいな、と考えます。
そこで、税率がとても低いパナマなど、タックスヘイブンといわれている税金逃避国にA社の関連会社B社を作ります。
そして、相場よりはるかに低い価格でB社に「販売」し、500万円しか利益が出ないことにすれば、貧困国ザンビアに支払うべき利益税や輸出にかかる関税は安く済みます。
次に、タックスヘイブンでその関連会社が鉱物の価格を日本の相場価格に戻し、実際のお客さんである先進国日本に「転売」します。
銅そのものはタックスヘイブンを経由することなく、貧困国から直接日本のお客さんに運送されます。
タックスヘイブンに構える会社が関連会社であるという事実を隠すためには、複数のペーパーカンパニーを立ち上げたり、会社を複雑に関連付けたりすることが多く、2016年にパナマの法律事務所からリークされた「パナマ文書」では、このような仕組みの一部が暴露されました。
つまりこの例でいうと、本来は途上国ザンビアは利益税100万円と輸出にかかる関税100万円合計200万円貰えていたはずなのに、半分の100万円しか貰えないということになります。
被害を受けている貧困国はこのような流出を取り締まるほどの予算や人材(国際弁護士など)を揃えることができません。
実際、ザンビアは2001年から2010年にかけて88億ドルもの不正流出がありました。
ビジネスの世界では当たり前の現状
資源を保有する途上国政府は、税率を上げて資源の利益を国に還元したい。外資企業は利益を上げるため税金を低くさせたい。
このバトルとなります。もちろん、先進国外資企業の方が圧倒的に強いです。
例えば、「こんなに税率高いんなら、ザンビアではプロジェクトやめるね!安いペルーでするわ!」と言えばザンビアもちょっと待ってちょっと待ってとなってしまうし、途上国政府の人に、「息子大学に行かせたいよね?お金あげるから税率上げないでね!」と賄賂を渡してクリアしてしまうこともあります。
このようなタックスヘイブンを使った不正な価格設定の取引は、「悪質」な企業による行動だと思われがちですが、ビジネスの世界では当たり前なこととして、ごく一般的に行われています。
例えば、アメリカの多国籍企業が人口7万人の小さな諸島であるバミューダで得ている利益は、日本、中国、ドイツ、フランスで得ている利益の合計額より多いと報告されていて、どれだけ広く行われているか分かると思います。
そしてGFIの報告によると、この「流れたお金」の最大で67%が、アメリカ、日本、イギリス、オーストラリアの銀行にあるんです。
問題対策を妨げる先進国
じゃあ、国際協力とかODAとかよりも、この不法資本流出問題への対策をしないといけないと思いますよね。
国連には不法資本流出のような問題を検討する「税金問題における国際協力に関する専門家委員会」というのが存在して、最貧国・発展途上国はこの委員会を正式に国際機関へ格上げすることを強く求めました。
しかしこれに対して、アメリカ、日本、イギリスなどが強く反対し、実現できないんです。
コラム
これを考えると、「国際貢献」という名目でお金をちょっと途上国にあげながら、裏では大量にお金を途上国からとっている、という構造があって、先進国はこの構造を壊したくないことが分かりますよね。
私たちがいま豊かに生活しているのは、支援してあげてると思ってた途上国から実はお金を貰っているからなのでは?と思ってしまいます。
本当に途上国の発展を考えるのであれば、「支援」するお金ではなく、「流れるお金」を止めることがまず最初にするべきことなんじゃないかな?と思います。