電気自動車のバッテリーに使う代表的な金属、リチウムが10月25日、過去最高値を付けました。
電気自動車、スマホ、再生エネルギー用のバッテリーなど、リチウム需要はどんどん増えていて、各国の企業の争奪戦になっています。
リチウム眠るボリビア
ではそのリチウムはどこで採れるか知っていますか?
世界の全埋蔵量の約70%は南米のボリビア・チリ・アルゼンチンの3カ国にあります。
この3カ国のリチウム産出地域はリチウムトライアングルと呼ばれていて、特にその中でも、ボリビアのウユニ塩湖は世界の全埋蔵量の約50%のリチウムが眠ると言われる世界最大のリチウム鉱床なんです。
今後世界のリチウム需要を満たすためにはウユニ塩湖の開発は必要不可欠です。
でも、このボリビアに眠る莫大なリチウムをめぐって、波乱が起こっています。
なぜ宝の山のボリビアが最貧国?
発展途上国で鉱山開発を行う際は外資系企業が関わることが多いです。
その場合大半の利益は企業側に流れてしまいます。
近年、鉱物資源の価値が跳ね上がっているのに、鉱山を持つ中南米諸国の利益には反映されていません。
この利益分配は国と企業の間で正式な合意がされた上で行われています。
でも、外資系企業とボリビア政府との力関係からか、外資系企業に有利に分配されることが多いです。
ボリビアの莫大な不法資本流出
しかし、それ以上に問題になっているのは不法資本流出です。
外資系企業はタックスヘイブンなどで関連会社を経由させることや、不正価格設定をすることで脱税を行って、本来途上国に納められるべき税金を搾取するという仕組みです。
詳しくは:なぜ途上国は貧困から抜け出せない?闇すぎるタックスヘイブン問題とは?
この問題は深刻で、世界的な規模で見ると、最貧困国・発展途上国からの不法資本流出は先進国による政府開発援助(ODA)を遥かに上回るレベルとなっています。
2008年から2017年までの10年間で、ボリビアから不法資本流出した金額は約118億ドルです。
外資企業の開発が進んでいるチリやアルゼンチンはもっと大きな額です。
不公平な利益分配と不法資本流出が横行している現在、外資系企業が開発を行うことは途上国にとって損がとても大きいです。
また過去にボリビアでは、コチャバンバという都市の水道事業を外資系企業の下で民営化した結果、水道料金が2倍以上に跳ね上がった「水紛争」と呼ばれる事件も起きています。
自国での開発はできない?
じゃあ、ボリビアはリチウムの利益を自国に還元するために、国内での開発はできないんでしょうか?
国内では賛否両論があります。
ボリビアは中南米の最貧国の1つであり、大規模なリチウム開発を行うだけの資本がないと言われています。
また、 外資系企業の資本が入れば労働賃金は上昇すると考えた 鉱山労働者が、外資系企業の参入を認めることを求めるデモを起こし、当時交渉に当たっていた副大臣が殺害される事件もありました。
また資本以外にも、開発による環境破壊の懸念もあります。
すでにボリビアでは、金や銀などの重金属の採掘で、土壌汚染・水質汚濁・大気汚染などの環境問題が発生しています。
リチウムの採掘には大量の水が必要で、水の枯渇や汚染などの危険性が高いです。
コラム
リチウム最高値!なニュースの裏側には、いろんな問題があるんですね。
ボリビアのリチウム開発は、先進国による搾取の構造や環境問題、労働問題などが絡んで、他にも国内での格差や民族対立といった問題もあります。
ボリビアのリチウム開発の行方に今後も注目して、最善の開発って何か、考えていきたいです。