みなさんこんにちは、コクレポです。
みなさん、水は蛇口をひねったら当たり前のように使えますよね。でも最近、この水をめぐった紛争が増えているんです。
昔からいろんな資源をめぐって紛争が起きていましたが、水資源もその例外ではないんです。
今回はそんな水紛争について解説したいと思います。
世界の水不足の現状
過去50年間、人口が40億人増えたこともあって、世界中で家庭で消費されている水量が6倍に増加し、工業と農業で消費される水量がそれぞれ3倍、2倍に増加しました。
水の需要が供給をどれくらい上回っているかというウォーターストレスという指標があって、低い・やや低い・やや高い・高い・非常に高い、に分けられています。
ウオーターストレスが非常に高い17ヵ国のうち、12ヶ国が中東、北アフリカにあります。
紛争の引き金になる水問題
現在では人口増加や気候変動によって水不足状態はさらに悪化していて、家庭や村レベルで井戸の水をめぐる対立や、汚染や不十分な水道の配備による水不足に対するデモ、川・ダムなどの水資源の使用権をめぐる争いが増えています。
特にウォーターストレスが高い地域では、この水問題が紛争の引き金となっているケースが特に多いです。
たとえば、ケニアの乾燥した北部地帯では、穀物を生産する農場主と移牧の牧畜民との間で、水資源へのアクセスがよく争いの種になっていて、2010年以降、約140人が殺害されています。
シリアでは、2006年から2011年の間に史上最大の干ばつが起きました。政府の農業政策や、灌漑システムの効率が悪く、干ばつがもたらした水問題がより深刻となってしまいました。
その結果、2011年までに約150万人がキャンプに避難し、干ばつが原因となって起こった飢饉と不景気、そして政府の汚職に対する反政府デモが2011年3月に首都ダマスカスやアレッポ市で発生しました。
このデモがシリア紛争の出発点として考えられているんです。
中央アジアのキルギスも水不足に悩まされていて、ウズベキスタン東部からキルギス、タジキスタンに広がる川の水を巡る争いが激しさを増しています。運河の水はタジキスタンからキルギスへと流れていて、上流のタジキスタンによってその水量が制限されたため、暴力へと発展し、殺害事件も起こりました。
紛争で攻撃される水資源
武力紛争が発生した結果、直接的、または間接的に害を受けることがあります。たとえば、紛争のとき水資源の戦略的な価値は高くて、井戸・浄水場・貯水タンクなどが敵の給水を断つために狙われる場合があります。
また、水資源を狙っていなくても大規模な爆撃などで水関連の施設が壊されたり、紛争における汚染で水を使うことができなくなったりする場合があります。
この問題はイエメン紛争が特に目立っていて、2015年から、サウジアラビアからの数々の空襲によって、反政府勢力のフーシが支配している都市の水道がほぼ全壊してしまい、2018年の時点で約193万人が水を買えなくなりました。
その上、切断された水道による水不足が公衆衛生危機をもたらし、国内でコレラなどの水系感染症が大きく増加しました。
2014年から続いているウクライナ東部の紛争でも、水資源が問題となっています。
紛争の中心地となっているドネツク盆地では、送水管や送電線が標的となってしまい、2017年には水処理場が継続的に砲撃を受けて、ドネツク市の周辺の光熱水が24時間以上ストップしました。
コロンビアの紛争でも水資源が攻撃の標的となってきました。政府軍と反政府勢力と間の紛争は60年間も繰り広げられていますが、2014年に、中央コロンビアで反政府勢力(FARC)によって水路が攻撃され、約20万人がきれいな水を手に入れられなくなりました。
紛争の武器になる水資源
さらに紛争の武器として、水資源を制限したり、川を汚染させたり、洪水を引き起こすためにダムなどの破壊・放水したりするなど、意図的に水不足状態が引き起こされることもあります。
このような事件の影響はとても大きくて、人だけではなく、環境にも大きな被害をもたらしています。
たとえば、IS(イスラム国)は水をたびたび武器にしていました。2016年の時点で、ISはイラクとシリアの主要なダムを多く支配していて、敵対する農村への配水を制限したり、ダムを放水して、下流の地域に住む人々を避難させることもありました。
モースル市での戦いで、ISはイラク軍の進軍に対して、いくつの給水所への電力を切って、東モースルの水道を切断しました。市民は水を補給するために、ISが支配している地域に避難して、結局ISに人間の盾として利用されていました。
南アジアにおいても水が武器として使われています。パキスタンとインドの間で争われているカシミール地方をめぐる対立では、2019年2月、パキスタンの支援を受ける武装勢力がインド軍のバスを爆撃し、40人が殺害され、これに対して、インド政府がインドからパキスタンに流れるインダス川の流れを止めると脅しました。
また、その後8月にインドが一方的にインダス川の支流のダムから放水を行って、下流にあるパキスタンの地域に洪水を起こしました。インドとパキスタンはインダス川の水資源を共有する協定で結ばれていて、パキスタンは、インドの行動は協定に違反し、戦争行為だと主張しました。
イスラエルとパレスチナとの間でも、水資源がイスラエルの武器のひとつとなっています。
たとえば、イスラエル政府が実質的に封鎖しているガザ地区は、上水の設備のメンテナンスもできない状態で、そこに暮らす200万人の97%はきれいな水へのアクセスがない状態です。
また、イスラエル軍が占領するヨルダン川西岸に住んでいるパレスチナ人のうち、約29万人が水へのアクセスが制限されています。
パレスチナ人を退去させ、イスラエルの入植者地区を拡大させるために水道施設の設置を拒否したり、破壊したりしていることがたびたび報告されています。
コラム
いつもじゃぶじゃぶ出る水をめぐって、こんなに紛争が起きていることは初めて知った人も多いんじゃないでしょうか?日本では、水と紛争に関する情報はほとんど皆無に近い状態です。
日本に住んでいたら、「水が足りない」、「明日、蛇口から水が出ないのかもしれない」、「戦わないと、水は手に入らない」などの心配事は想像しにくいですよね。
でも、世界に住む人々の3分の1はそのような現状に苦しんでいて、「次の大きい戦争は水を巡るものとなる」といった指摘もたびたびされているんです。
実はこの世界的な水危機を解決するのには、世界のGDPの1%しかかからないとも言われているんです。なのに、だれもこの問題を知らなければ解決に向かえませんよね。
まずは世界の問題を知ることが、解決への第1歩だと思います。みなさんもこの問題についてどう思ったか、コメントくれるとうれしいです。