民間軍事会社ワグナーグループって?戦争の民営化が進行中!?

みなさんこんにちは、コクレポです。

現在、2022年5月もロシアのウクライナ侵攻で日本でもちらほら注目されるようになったロシアのワグナーグループなどの民間軍事会社が、世界ではたびたび注目されています。

民間軍事会社は、陰に隠れて活動する場合もあれば、活動範囲を大きく広げ、堂々と活動している場合も少なくないんです。

この記事では、そのような民間軍事会社とその活動について探っていきたいと思います。

アメリカ民間軍事会社の訓練 Creative Commons — Attribution 2.0 Generic — CC BY 2.0

ビジネス、戦争、民間軍事会社

どの時代でも、世界のどこにおいても、金儲けと戦争とのつながりは深いです。

そもそも、ほとんどの戦争の背景には、富や資源をめぐる争いが存在すると言えます。

武力紛争を行う政府や反政府勢力が、自国の企業などと協力しながら紛争を進めるケースはよくあります。

また、紛争の現場で多くの武力紛争の主役となる「ウォーロード」も、政府のコントロールが行き届いていない地域で、不安定な状況を利用し資源や経済活動を牛耳る存在です。

ウォーロード(warlord)っていうのは、私的利益を追求するための武装勢力のことです。

政府の統治能力が低い地域で生まれ、その地域の実質的な支配者となります。

反政府勢力と違い、政府転覆は目指さず、政府軍との衝突も避けます。

占領・活動地域内での安全保障環境を独占することによって経済活動もコントロールでき利益を得ます。

さらに、戦争を行うためには大量の武器を作りグローバルなネットワークを通じて戦場に届ける必要があることから、武器貿易も巨大ビジネスです。

世界の紛争はなぜ続く?闇すぎる武器ビジネスとは?の記事でくわしく書いてるので読んでみてください。

兵力に関しても、昔からビジネス的な側面を伴っていました。

古代エジプトが行っていた戦争では、1万人を超える外国人傭兵が参戦していたと記録され、中世時代のヨーロッパやアジアでも傭兵で構成された部隊が大きな戦力となっていたケースがあります。

また、植民地化において、多くの場合その最先端を走っていたのは宗主国となる政府ではなく企業で、奴隷貿易、資源や土地の略奪と占領には企業自身が兵力を有して行っていました。

現代の形の民間軍事会社は、軍事関連のサービスを提供する法人企業として、第二次世界大戦後から欧米で現れ始め、冷戦後にアメリカとソ連による世界各地での直接軍事介入が減少する中、この民間軍事会社が急増していきました。

1990年代には、アパルトヘイト政権の終結と共に、主に部分的に解体された南アフリカ軍の退役軍人で構成されたエグゼクティブ・アウトカムズ社(Executive Outcomes: EO)と、イギリス軍の退役軍人が立ち上げたサンドライン・インターナショナル社(Sandline International)の存在が特に目立っていました。

アンゴラ、シエラレオネ、インドネシア、パプアニューギニアなどの政府や、大手石油・鉱山会社からも委託されていました。

特にアンゴラとシエラレオネでは、EOが政府軍と協力しつつも、自社の兵力や戦闘ヘリ、歩兵戦闘車などを用いて、反政府勢力を撃退・追放することに成功しています。

アフガニスタン兵士に迫撃砲の使い方を教える民間軍事会社の社員(写真:U.S. Army photo, Capt. Jarrod Morris [Public domain])

しかし、民間軍事会社がもっとも増えたのはアメリカでした。

アフガニスタンやイラクの戦争が始まると、米軍の活動の多くは民間会社に委託されることとなりました。

第二次世界大戦中、アメリカの軍事関係者の約10%が国軍外の下請け会社の社員で構成されていましたが、2003年のイラク戦争になるとそれが50%にも跳ね上がっていました

2016年の時点で、米軍の下請けでアフガニスタンに派遣されている民間人の数は、米軍の約3倍、イラクでは約2倍にもなっています。

同紛争の死亡者数をみても、米軍関係者より下請けの民間人のほうが上回っています。

ダインコープ社(DynCorp)やアカデミ社(Academi)などアメリカを拠点とする大手民間軍事会社は、1万人以上の社員を雇い、10億米ドル単位の収益を得ています。

これらの会社は、イラク、アフガニスタンの他に、コロンビア、イエメン、ソマリア、南スーダンなど多くの紛争地や政情不安定な地域で活動してきました。

平常時に一般的な警備を提供する会社も含めると、その規模はさらに大きくなります。

紛争地域で活動する会社の中には、一般の警備を提供している会社もあり、それらを合わせて民間軍事警備会社(Private Military and Security Company: PMSC)と呼びます。

この中では、特にイギリスに拠点を構えるG4S社の存在が目立ちます。

G4S社は世界125カ国で事業を展開していて、民間企業での単独従業員数(625,000人)としては世界2位とまでなっています。

軍事活動も行っていますが、警備活動が中心です。

その他、軍事活動がメインとなっている企業も、紛争のない国で活動をすることがあります。

例えば、ブラックウォーター社(現在のアカデミ社)はハリケーン・カトリーナ後のアメリカ・ニューオーリンズでの警備や、日本のミサイル防衛用のレーダーの警備などを委託されることもありました。

イラクでアメリカ国務省関係者の護衛を担当する民間軍事会社の社員(写真:Jamesdale10 [ CC BY-2.0 ])

疑わしい活動、危険な活動

民間軍事会社の活動は大きく3つに分けることができます。

1つ目は「軍事力の提供」で、前線での活動となります。

戦闘関連の活動や警備、飛行機やドローンによる偵察なども含まれます。

2つ目は「後方支援の提供」で、運送、物流などのサポート業務が挙げられます。

3つ目は「コンサルティング業」です。

国軍などに対する教育・訓練、分析及び助言業務です。

特に問題が発生するのは1つ目の「軍事力の提供」です。

ひとつの大きな問題は、民間軍事会社が利益を追求する団体だというところにあります。

利益が出る見込みがなければ、そもそも出動することはありません。

先進国の大きな軍隊の下請けとなるものに関しては国軍の延長線としてみることができるかもしれませんが、貧困国の政府から委託される場合、民間軍事会社の費用はその国の天然資源と関連付けられ、鉱山の売上のシェアなどで支払われることがあります。

場合によっては、政府から委託されるとしても、国民の安全より収益の高い天然資源の確保を優先し、反政府勢力を抑える、あるいは長期的な治安回復関連の業務よりも、鉱山を取り返すことやその施設の警備が活動内容のメインとなってしまうこともあります。

また、現地の政府ではなく、鉱山・石油関連の外資系企業から委託されることもあり、これらの企業による不法な鉱物資源の搾取に加担することもありえます。

利益の追求が目的となっているため、人材についても問題が発生します。

民間軍事会社は国軍と違って、社員の国籍は問いませんが、国籍とバックグラウンドによって給料が異なります。

先進国の退役軍人は高いレベルの訓練を受けていることもあり、高い給料でなければ雇えません。

一方、貧困国出身の人材だと給料が安くても雇うことができます。

まさに世界の格差問題が現れているんです。

たとえば、イラクでの米軍施設の警備を委託されていたイギリスのイージス社(Aegis)(※)の行動が2016年に注目されました。

※イージス社は2015年にカナダのガルダ・ワールド社(GardaWorld)に買収されました。

当初、米軍からの高額な委託料により、先進国からの退役軍人を主に雇っていましたが、委託料が減ってくると、ネパールなどの退役軍人を安い給料で雇って、やがて、さらに安く雇えるアフリカから人材を確保するようになりました。

軍事活動の経験者を求める中で、トラウマを抱えているシエラレオネの元少年兵もその中に含まれていたことが判明し、問題となりました。

シエラレオネ紛争で破壊された学校の近くで遊ぶ子どもたち(写真:Laura Lartigue [Public domain], via Wikimedia Commons)

誰に、何のために委託されるのかも問われています。

正当な政府から委託され、その政府の法律に従って活動をしていると主張する民間軍事会社は多いです。

でも、違法に闇で反政府勢力や企業から委託される場合もあります。

たとえば、2004年に傭兵グループが赤道ギニアの政府に対してクーデター未遂事件を起こし、イギリスのサッチャー元首相の息子がその関与で有罪判決を受け、本人の関与が疑われることもありました。

また国際的に認められている政府からの委託といっても、その委託内容が国民の抑圧、戦争犯罪や人権侵害への加担となった場合にどのような責任が問われるのかは難しい問題です。

たとえば、サウジアラビアとアラブ首長国連邦が主導する連合が介入しているイエメン紛争において、戦争犯罪とも捉えられる行為や人権侵害が数々記録されています。

その連合の主要な一員であるアラブ首長国連邦は、民間軍事会社に大きく頼っています。

アメリカのアカデミ社もダインコープ社も委託された経緯があり、また、アラブ首長国連邦政府は、紛争経験が豊富なコロンビアやその他の中南米の傭兵を直接雇っています

さらに、アラブ首長国連邦は外国軍の退役軍人を個人ベースで雇うこともあります。

例えば、同国のヘリ部隊の長となっているのは元米軍の退役軍人でしたが、2017年にヘリがイエメンの港を目指していた船に対して複数回にわたり発砲し、40人以上のソマリア難民が殺されました。

アラブ首長国連邦は否定しているものの、同国のヘリによる行為であった可能性が高いです。

さらに、民間軍事会社の中でも、指揮系統や交戦規則などのルールが明確で、人権や戦争犯罪に関する訓練や教育が徹底されているかどうかも大きな問題となりえます。

イラクでは、ブラックウォーター社の社員による殺害事件が複数報告され、特に、米大使館車両の護衛中に同社の社員が一般市民に向けて発砲し17人が死亡した2007年の事件が目立っています。

イラクで爆撃の偵察をするブラックウォーター社のヘリ(写真:U.S. Air Force, Master Sgt. Michael E. Best [Public domain], via Wikimedia Commons)

このような事件に対して、戦争犯罪の場合は国際刑事裁判所(ICC)に持ち込むことができるのかもしれません。

また、事件が発生した国、もしくは民間軍事会社の社員やその他の傭兵の出身国の司法制度で裁くことができる場合もあります。

実際、上記のブラックウォーター社の事件では、4人がアメリカで有罪判決を受けました。

このような事件が起きなくても、民間軍事会社の前線への参加自体がどこまで許されるのかも問われています。

戦闘行為を行う「傭兵」の募集や使用などを禁じる決議が1989年に国連総会で採択されましたが、警備や護衛などはグレーゾーンとして残っています。

また、合法な組織による正当な活動として認められたとしても、民間軍事会社の存在と活動を厳しく規制・監視をする必要があります。

平和活動の救世主?

2015年、ナイジェリアは反政府勢力ボコ・ハラムとの戦いで民間軍事会社のSTTEP社に協力を依頼しました。

ボコ・ハラムは政府との戦争において、子どもの誘拐やテロ事件などを起こし、ISに忠誠を誓った団体として悪名高いです。

他国が介入の意欲を見せない中、STTEP社の力を借りたナイジェリア政府が比較的短期間でボコ・ハラムに大きな打撃を与えることができました。

これはけっして平和活動ではなく、上記のように民間軍事会社をめぐり多くの課題や問題が残っています。

ですが、このケースにおいては、民間軍事会社が政府による統治と治安を取り戻すという効果的な役割を果たしたことも否定できません。

民間軍事会社は確かに利益を追求しますが、国家も類似のものとも考えられる国益を追求します。

他国での人道問題がどれほど深刻であろうと、国益上の価値が認められなければ、国家はなかなか動きません。

また、国益として重要だと認められたとしても、自国の兵士が亡くなれば政治的なコストがかかることから、政府は国軍の代わりに、「自己責任」として片付けられる民間軍事会社へ委託する場合が多いです。

そこで、人材の獲得に苦労する国連平和維持部隊(PKO)においても、民間軍事会社の活用が議論されるようになっています。

国連とその関連機関は、すでに施設警備、護衛、訓練などを民間軍事会社に依頼していますが、PKOへの参加はまだ見られていません。

現在、先進国はPKO用の資金は提供しても、兵力はほとんど提供していません。

PKOに参加する兵士の多くが、いわゆる発展途上国で構成されていますが、提供されている部隊は十分な訓練を受けていない場合もあります。

また、どの国に関しても、PKOに全力で参加するインセンティブが低いため、そのような状況の中で、民間軍事会社の社員をPKO兵士として動員することについては、慎重に、かつ、条件付きで推進するが現れています。

コラム

民間軍事会社の存在って知ってましたか?

戦争が民営化されていることってぜんぜん知られていないように思います。

民間軍事会社は、安い兵力として貧困国から買われてしまうという格差の面や、違法グレーゾーンの取引がたくさんあったりと問題がたくさんありながら、国が動かないとき、平和の貢献をする役割もある存在なんですね。

国際政治の悪役として非難されやすい民間軍事会社ですが、PKOへ委託され、平和の回復に貢献するかもしれない一面もあるのはおどろきでした。

中央アフリカ共和国でPKOを視察するアントニオ・グテーレス国連事務総長(写真:UN Photo/Eskinder Debebe [ CC BY-NC-ND 2.0 ])
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