みなさんこんにちは、コクレポです。
2023年10月、コロナが明けてようやく、3年以上ぶりの海外バックパッカー旅。
村上春樹の「ラオスにはいったいなにがあるというんですか」を読んでから、ずっと行ってみたかったラオスに行ってきました。
早朝、鮮やかなオレンジ色の袈裟を着た僧の托鉢姿を見たり、エメラルドグリーンの楽園のようなクアンシーの滝で泳いだりと、とても楽しく過ごしたのですが、このラオスに残されたクラスター爆弾の不発弾の現状を知っていますか?
1964年から1973年の間、ベトナム戦争と並行し、ラオスはアメリカから空爆を受けました。
空爆の回数は約58万回。時間に換算すると9年間、8分に1回の空爆が行われたことになります。
落とされた爆弾の量は200万トンを越え、当時のラオスの人口で計算すると、1人当たり 1トンの爆弾が落とされたことになります。
ラオスは「一人当たりの空爆の数が世界で最も多い国」と言われています。
その余波は現代にも残っています。
土壌に残る不発弾(UXO)による被害が、戦争から約40年経った今でも問題となっています。
また、空爆が残した不発弾やクラスター爆弾のケース、その他爆弾の残骸の量があまりにも多すぎて、特に農村部ではその残骸をそのまま生活用具に使ったり、あるいは再加工しスプーンやアクセサリーにし、観光客に売って収入を得る「爆弾残骸ビジネス」が存在します。
しかし爆弾処理を行うのは専門家ではなく、専門知識を持たない村人がほとんどです。
村人や子供は爆弾の残骸を拾っている最中や再加工中に不発弾被害に合う危険性があります。
しかし貧困部に住む人々によって不発弾の利用は生活の糧となっており、簡単にやめることができません。
今回は、ラオスの空爆と、いまも残るクラスター爆弾の問題について、詳しく解説します。
空爆の歴史的経緯
フランスの植民地支配下に置かれていたラオスは、1953年に独立を果たしました。
しかしラオス国内で独立後の政治主導権をめぐってラオス王国政府と共産主義勢力であるラオス愛国戦線(パテト・ラオ)が対立し、紛争が勃発しました。
アメリカ政府は王国政府を支援し、愛国戦線に抵抗しました。
同時期に、隣国のベトナムではベトナム戦争が起こっていました。
アメリカの支援する南ベトナム軍と、北ベトナムの支援する南ベトナム解放民族戦線が争いました。
アメリカは、ベトナム戦争において北ベトナムの優位が高まると、1964年にラオスでの秘密作戦の一環として空爆を決行しました。
目的は大きく分けて2つあります。
1つ目は、共産主義勢力であるパテト・ラオへの攻撃です。
当時冷戦時代だったことを考慮に入れると、アメリカは北ベトナムの影響によるラオスの共産主義化を断ち切る必要がありました。
2つ目は、北ベトナムから南ベトナム解放民族戦線への兵力・戦争物資の供給路線である「ホーチミンルート」を打ち切ることです。
また、ラオスは爆弾の投棄地としても利用されました。
タイでの米軍基地からベトナムに向かったアメリカの空爆機がベトナムでの本来のターゲットを爆撃できなかった際、爆弾を積んだまま着陸することができないので帰路にあったラオスに爆弾を投棄したんです。
不発弾の現状
不発弾について大きな原因となっているのはクラスター爆弾です。
クラスター爆弾は1つの爆弾の中に数百もの小爆弾が内包されていて、それらが空中で飛散する仕組みになっています。
この小爆弾はすべてが爆発する訳ではなく、多くの不発弾が発生します。
ラオスでは1964〜1973年の間に約2億7,000万個のクラスター爆弾による小爆弾が落とされました。
そのうち約8,000万個、つまり約30%が本土に残っています。
不発弾被害にあった人の数は1964年から2008年の間で5万人以上、そのうち戦後の被害者数は2万人にのぼります。
5万人の被害者のうち40%は子供です。
不発弾は小さく見た目がおもちゃのように見えることもあり、子供は大人に比べると被害に遭いやすいです。
被害は人的なものだけではありません。
不発弾が土壌に残っていることで土地の利用コストが高くなり、また土地開発の際のリスクが大きくなります。
したがって土地利用が制限され、インフラ整備や農業活動が制限されます。
戦後40年間で除去された、もしくは破壊された不発弾は全体の1%に満たず、世界のクラスター爆弾の不発弾被害の半数以上がラオスで起こっているという現状があります。
問題への対策
ラオス政府は1996年に国連開発計画(UNDP)の援助を得て、国営の不発弾除去機関としてUXO Laoを設立しました。
国営機関だけでなく、NGOや国際機関も不発弾問題への取り組みに大きな役割を果たしています。
その例として、世界40カ国以上で不発弾・地雷の除去活動をしている Mines Advisory Group(MAG)、イギリスで設立された地雷除去NGOの HALO Trustなどがあります。
これらの機関は地雷除去だけでなく、不発弾に関するリスク教育にも大きく貢献しています。
さらに国営・非国営を含め幅広く不発弾除去活動を監査する機関として2005年には不発弾処理活動の国営監査機関の UXO-NRAが設立されました。
残るクラスター爆弾の問題
将来に渡って甚大な被害をもたらすクラスター爆弾に対し、国際的規制の動きが強まっています。
その最たる例が、2008年に署名、2010年に発効されたクラスター爆弾禁止条約です。
この条約の背景には、対人地雷条約による成果と勢いもあり、世界200以上の市民団体・NGOの連合体である「クラスター爆弾連合」による活動も貢献しました。
この条約はクラスター爆弾の保有、製造、使用および移動を全面的に禁止したものであり、現在94カ国が批准しています。
一方で、アメリカ、中国、ロシア等の大国が加盟していないなど課題も残っています。
また、この条約は非批准国でのクラスター爆弾使用の抑制を加盟国に義務づけるものでありながら、2010年以降非締約国7カ国でクラスター爆弾の使用が確認されています。
その大半はイエメンとシリアで使われています。
そして2023年、アメリカはクラスター爆弾のウクライナへの供与に踏み切りました。
ロシア側もウクライナで使用を繰り返していると指摘されています。
コラム
ラオスをはじめ、世界各地で眠っている不発弾は今も被害をもたらし続けています。
ラオスの不発弾問題は、ラオス政府、国 際機関、NGOなどの努力や、アメリカからの支援額が増えたことで改善する可能性はあります。
しかし、未だ除去された不発弾は全体の1%以下という現実があります。
世界全体でのクラスター爆弾対策は、条約締結による進展がありながらもその威力と効果から手放そうとしない大国も多く、現在も使われているクラスター爆弾の撲滅への道のりは遠いです。