紛争の死者数:空爆だけじゃない。直接死より間接死が圧倒的に深刻

みなさんこんにちは、コクレポです。

現在2021年5月16日時点で、ガザ地区の空爆で100人以上の死者数が出ています。

空爆でビルやアパートが破壊される映像が連日流れています。

Israel destroys Gaza tower housing foreign media – BBC News

現在世界各地で起きている紛争によって、多くの命が失われています。

最近はシリア、イエメン、リビア、ソマリア、ナイジェリアでの紛争が特に規模が大きく、2019年の紛争による死者数は5万1千人とされています。

ただこれは紛争にまつわる死の一部でしかありません。

なぜなら、この数字は直接的な暴力行為によって死亡した人の数で、飢餓や感染症といった、紛争の副次的な産物による死亡者が含まれていないからです。

実際は、そういった戦闘以外の理由での死者の数がとても多いんです。

でも、多くの紛争に対してそれがどれほどの規模に達しているのかについて調査が行われていません。

本当の意味で紛争によって命を落とした人が近年世界全体でどの位いるのかは、把握されてはいないんです。

破壊された街、アレッポ シリア IHH Humanitarian Relief Foundation Azez, Aleppo (3) ( CC BY-NC-ND 2.0

紛争の実態

ここでは戦闘によらないところで、紛争が勃発した際にどのようにして命を落としてしまうのかを考えてみましょう。

前提として、紛争とは複雑な社会現象です。

紛争が起きると、水道や電気、ガス、医療などの社会サービスは停止し、スーパーマーケットなど食料を提供する店舗の営業も停止します。

交通網は混乱し、医療従事者がいないばかりか薬も届きません。

銃撃戦により物理的なダメージを負うだけでなく、街や村を破壊されることによって生活インフラが破壊されてしまうんです。

その結果、なんとか逃げ切ってもそれ以降の生活を支える食料もなく、怪我の手当てをする医薬品も不足します。

衛生環境も悪化していき、感染症も蔓延します。

運良く難民キャンプに入ることができても、人口密度の高さやキャンプへの支援不足を原因として、感染症が蔓延することが多いです。

こうして人は命を落としていきます。

間接死>直接死

実際に近年の紛争は、そういった紛争の間接的な被害による(以下「間接死」)死者数が暴力による(以下「直接死」)を上回る場合が多いです。

Global Burden of Armed Violence report by Geneva Declaration のデータをもとに作成

実際に上の表に挙げられている13の紛争において、コソボ紛争を除いた全てで全死者数の60%以上が間接死です。

その中でも特に、第二次世界大戦後世界最大の紛争であるコンゴ民主共和国における紛争は、1998年8月から2007年4月までに約540万人の死者を出しましたが、その内直接死は10%以下で、90%が間接死だという統計があります。

紛争はいまだに部分的に続いていますが、死者数に関する調査はもう行われていません。

一方コソボ紛争で間接死がほぼ皆無だったのは、紛争前の生活インフラの充実度や生活水準が高かったことや、国内外の避難先における社会保障サービスが充実していたことで、危機に対する対応力が比較的あったことも理由としてありますが、アメリカやNATOの介入に至るまでに国際社会の注目を集めたこの紛争に対して、多くの人道支援が施されたことが大きいです。

コソボとコンゴ民主共和国が共に紛争下にあった1999年、1人あたりの援助額は前者が207米ドルに対して後者は8米ドルと、その差は歴然としています。

見方を変えれば、紛争における間接死は、社会インフラの整備や生活水準の向上に加えて、人道支援によって防ぐことのできるかもしれない死、ということができます。

人道支援の実態

紛争による不条理な犠牲を防ぐための重要なファクターとして、必要とされる人道支援は近年増加しています。

Financial Tracking Service のデータをもとに作成

国連は、2021年の全世界における支援対象者約159万人を援助するための必要額は約351億ドルとしています。

しかも、支援対象者には入れなかった、支援を必要としている人口は235万人です。

国連の定める「支援対象者」は、事態の重要性や、支援を届けるためのアクセスが確保されているか、被害が国家主導で支援を施すことのできる範囲を超えているか、といったことを考慮に入れて数えられているからです。

でも、その大きな必要性に対して、現実的に供給できる支援は少ないです。

実際、去年2020年は必要額386億ドルに対して半分以下の17.8億ドルしか調達できませんでした。

紛争地域については Conflict Barometerのデータを、人道支援額と達成率については、 Financial Tracking Serviceのデータをもとに作成。

コラム:紛争で命を落とす人の大半は、拳銃ではなく世界の無関心の犠牲者

紛争って、空爆や銃で撃たれて死ぬものって思っていませんでしたか?

紛争が破壊するものは一体何なんでしょうか?

単純に弾丸によって命を奪われるだけじゃなくて、普通の生活が破壊されたことで、戦闘からは逃げ切れても命を落とす人がたくさんいます。

多くの紛争にとっては、むしろそういう間接死のほうが圧倒的に多いというのが事実です。

人道支援の金額も足りていない中、国際機関を通じた人道支援だけが本質的なアプローチではありません。

でも、間接死ゼロのコソボ紛争とコンゴ紛争の事例を比べると、援助を提供する先進国での注目度とその紛争への援助額、そして間接死の死者数との間に一定の相関関係は存在するといえます。

2020年、ブルキナファソ・マリ・ニジェールといった西アフリカ諸国では、紛争による情勢不安などから、480万人が食料不安に陥るとされています。

また、イエメンでは世界最悪の人道危機と言われていて、2021年中に40万人の子どもが、飢餓で死亡する危険があるとされています。

報道されない世界最悪の人道危機:イエメン紛争でくわしく書いてるので読んでみてください。

紛争の当事者が人々の死の根本的な原因になっているのは間違いのない事実である一方で、世界の人々の紛争への関心度が間接死の量を左右するならば、武力紛争で命を落とす人の大半は、拳銃ではなく世界の無関心の犠牲者といえるのかもしれません。

紛争の大きな要因のひとつ、世界の紛争はなぜ続く?闇すぎる武器ビジネスとは?もぜひ読んでみてください。

先進国が武器ビジネスでたくさんお金儲けをしている裏側で、市民が死んでいることがわかると思います。

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