報道されない世界最悪の人道危機:イエメン紛争(1)

みなさんこんにちは、コクレポです。

いま世界で最も深刻な人道危機に直面している国家はどこか知ってますか?

多くの人がシリアやパレスチナなど、紛争や難民についてよく取り上げられている国家を思い浮かべるかもしれません。

でも国連よると、その国家はイエメンなんです。

紛争による被害で荒れ果てたイエメン (写真:United Nations OCHA / Philippe Kropf [CC BY-NC-ND 2.0])

2014年から続く武力紛争が原因で、今イエメンでは、食料・水のパイプラインが壊滅していて、現在80%以上のイエメン国民が人道支援を必要としている状況です。

2021年中に40万人の子どもが飢餓で死亡する危険があるとされています。

また、最近はガザの空爆が連日報道されていますが、イエメンもサウジアラビアからの空爆をよく受けています。

空爆によって、1万8千人以上の民間人が死亡していて、2020年7月のサウジの空爆では、少なくとも7人の子供が死亡しまし

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サウジ主導の連合空爆でスクールバスが空爆を受け、数十人の子どもが死亡した。Creative Commons — Attribution 2.0 Generic — CC BY 2.0

これはイエメン国内だけの問題ではありません。

周辺国・利害関係国・国際テロ組織など、さまざまなアクターがこのような状況を作り出しています。

このようにイエメンでは世界最大の人道危機が起こっているにもかかわらず、日本の報道ではほとんど取り上げられていません。

今イエメンで何が起こっているのか、今回の記事で説明し、ガザは取り上げられるのにイエメンはなぜ取り上げられないのか、次回の記事で解説したいと思います。

UNICEFから供給されたきれいな水を汲むイエメン国民(写真:EU Civil Protection and Humanitarian Aid Operation CC BY-ND 2.0)

世界最悪の人道危機に直面するイエメン

いろんなアクターが複雑に関わってるのでややこしいと思いますが、とてもおおざっぱに単純化していうと、サウジアラビア率いる連合VSイエメンの反政府勢力フーシ派、という構造です。

イエメンは元々南イエメンと北イエメンが1990年に統一されひとつの国になりましたが、南北統一後もさまざまな政治的混乱が起こっています。

北アフリカ・中東で巻き起こったアラブの春の一連の出来事の末、長年独裁大統領のサレハ大統領が失脚しました。

その後ハディ大統領率いる政府が発足しましたが、新政権に不満を持ったフーシ派(イスラム教シーア派の一派ザイド派)の武装勢力が首都サナアを制圧しました。

復職の機会だと思ったサレハ前大統領の勢力がこのフーシ派に加勢しました。

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この混乱に乗じて南部では、アラビア半島のテロ組織アルカイダ(AQAP)も政府の影響力が弱まった南部を中心に勢力を拡大しています。

南部エデンに逃れた政府側についたサウジアラビアが周辺国などと連合を組み、空爆や地上軍を投入しています。

一方、フーシ派勢力をイランが支援しています。

ここにさらにアメリカがアルカイダへの無人機による襲撃やサウジアラビア連合軍への軍事支援や武器販売などを行って、状況をさらに悪化させています。

このように様々なアクターがそれぞれ政治的目的を持ってイエメン紛争に介入し、その利害関係はとても複雑なものとなっています。

また、2017年以降これらの状況に新たな動きが見られ、さらに複雑化・深刻化しています。

北部では、協力関係にあったフーシ派とサレハ前大統領勢力でしたが、サレハ前大統領がサウジアラビア連合軍への歩み寄りの姿勢を見せると、これにフーシ派が反発して対立が生じ、2017年12月にサレハ前大統領がフーシ派戦闘員に殺害されるという事態が起こりました。

一方、政府勢力が逃れた南部エデンでは、南イエメンの再独立を目指す南部独立派が大統領勢力を追い出そうと大統領官邸を包囲するなどし、政府勢力と激しく衝突しました。

これら一連の騒動によって、少なくとも36人が死亡、185人が負傷しています。

南部独立派がアラブ首長国連邦(UAE)から支援を受けているとされています。

また政府を支援するという立場を取るサウジアラビアは、ハディ大統領政府こそ合法で、それを守るという名目でフーシ派勢力圏への空爆も地上での攻撃も続けていますが、サウジアラビアに滞在しているハディ大統領の帰国を止めているとも報告されています。

これに対してフーシ派もサウジアラビアの領土やオイルタンカーを標的としてミサイルを発射していましたが、近年その射程が長くなっていて、被害が拡大しています。

さらにレバノンのシーア派の武装組織であるヒズボラによるフーシ派の支援や、イランのイエメンでの関与が拡大していて、紛争が激化しています。

国民への人道的被害は空爆を受けてしまうことだけではありません。

フーシ派に対抗するため、サウジアラビアはイエメンへの陸海空全ての物資輸送路を封鎖しています。

これによって人道支援が届かず、食料不足が深刻化していて、ここ数十年で最も深刻な大飢饉が発生し、約1800万人が飢餓にさらされています。

このまま封鎖が解除されなければ何百万もの人々が命を落とすことになります。

これに追い打ちをかけるように、イエメンで大流行しているコレラの感染者は第二次世界大戦後世界最多の100万人に到達し、死者は2000人を超えています。

このように悲惨で混沌としたイエメンの情勢において、国民は過去50年で最悪の人道危機に陥っています。

コラム

世界最悪の人道危機なのに、ぜんぜん報道されないのはなんでなんでしょう?

ガザの空爆は連日報道されるのに、なぜイエメンは注目されないんでしょうか。

世界の紛争はなぜ続く?闇すぎる武器ビジネスとは?でも書きましたが、サウジアラビアもアラブ首長国連邦(UAE)もイエメン紛争に大きく加担しているのに、世界各国、お金儲けのため、これらの国への武器販売を止めないのが現実です。

報道されない空爆の実態とは?でも書いた通り、空爆はターゲットに命中させるのはとても難しく、○○を狙ってる、といっても、たくさんの市民が犠牲になります。

そして、紛争の死者数:空爆だけじゃない。直接死より間接死が圧倒的に深刻で書いたように、報道されず先進国で注目されないと人道支援が不足し、餓死など、本来なら助けられた命が救えないんです。

イエメンはまさにこの間接死の人数がとても多いです。

次回記事では、なぜ報道されないのか、アメリカ、サウジアラビア、日本の利権が絡んで伝えたくない、その真相に迫りたいと思います。

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