サウジアラビアの実態:公開処刑、戦争、テロ、過激思想の普及!?

みなさんこんにちは、コクレポです。

公開処刑、戦争やテロ・過激思想の普及、と聞いて、サウジアラビアを連想する人ってあんまりいないんじゃないでしょうか?

現在2021年6月に行われたG7では、中国の人権侵害について各国厳しく非難していましたが、G7各国いろんな利権で結びつきが強く、非難されることなく堂々と振る舞っているのがサウジアラビアです。

一部の知識人からは「ISのような国家」と呼ばれるほど国内の人権状況は深刻で、国外には過激思想の普及を促すなど、ISにきわめて近いことが行われています。

今回はそんな国家、サウジアラビアの国内外での実態に焦点をあてて、それを黙認する世界について考えてみましょう。

サウジアラビアの皇太子兼防衛大臣:ムハンマド・ビン・サルマン  写真:Jim Mattis /flickr [CC BY 2.0] 

サウジアラビア国内の人権侵害

サウジアラビアの社会、文化を支配しているワッハーブ派は、他の宗派を認めない非寛容かつ過激なイスラム原理主義の形態の一つです。

この思想に国王の独裁体制が拍車をかけ、心身ともに国民を傷つける行為が国内法によって容認されています。

2019年の1年間に184人が首の切断、銃殺等によって公開処刑され、たった1日で、反政府デモ参加者を含む37人が「テロリスト」として処刑されました。

相手が未成年であっても死刑に容赦はありません。

裁判は公平性を欠きドラッグ等の軽犯罪でも死刑にされることもあります。

また、容疑者は弁護士へのアクセスを絶たれた独房の中で罪を「白状」するまで何百回もの鞭打ちをうけるなどの拷問もあり、外国人で言葉がわからない場合でも通訳なしで有罪になることもあります。

女性は男性の「保護者」なしには、病院での治療や高等教育を受けること、就職、外出すらできない場合もあります。

さらに、未成年に対する石打、手足の切断、鞭打ち、公開処刑等の暴力行為も合法とされています。

表現、結社、集会の自由等の自由権は認められておらず、ジャーナリストや人権活動家を拘束した事例もよくあります。

シーア派や移民労働者などのマイノリティに対する差別も根強く、教育等の行政のサービスへのアクセスや雇用条件を制限されています。

ランキングで見るサウジアラビア(2016年)民主主義ランキング (Economist Intelligence Unit)

サウジアラビアによる国外の人権侵害

ここまで国内の人権侵害を見てきましたが、サウジが招いている悲劇は国内だけではありません。

戦争介入

同国はアラブ諸国の連合軍を組んで、隣国イエメンでの紛争に介入していて、世界最悪の人道危機と言われています。

詳しくは、報道されない世界最悪の人道危機:イエメン紛争の記事を読んでみてください。

サウジ主導の空爆により、イエメンの学校、市場、モスクや難民キャンプなど、市民の活動地域も無差別に破壊されています。

この紛争でのこれまでの死者は直接死だけで1万8千人以上、飢餓や病死の間接死も合わせれば何倍にもなります。

また、サウジによる海上封鎖により物流がストップし、食料の90%を輸入に依存していたイエメンでは2,000万人以上が飢餓にさらされ、2021年中に40万人の子どもが飢餓で死亡する危険があるとされています。

物流が止まれば当然経済活動は低下し、治安は悪化、必要最低限の医薬品の入手が困難になるだけでなく、下水処理機能が滞り、衛生的な水すら手に入れるのは難しいです。

このような複合的な要因によって、現在イエメンではコレラが蔓延し、10万人以上とも言われる感染者が、飽和状態の病院に身を寄せ合って生死をさまよっています。

本来、これらはすべて未然に防ぐことができたはずですが、サウジアラビアをはじめとする連合軍の「紛争の継続」という選択が、今もイエメンの人々の命を奪いつづけています。

イエメンの破壊された街に立つサウジ兵士 写真:AHMED FARWAN /flickr [CC BY-SA 2.0]

過激思想の拡散

サウジが国外で与える影響は、戦争への直接介入だけではありません。

さっき説明したワッハーブ派の国外布教にも注力することで、過激思想の拡散に加担しています。

翻訳したワッハーブ派のテキストの出版、世界中の学校やモスク建設、広告メディアに莫大な投資が行われています。

実際にインドネシアやパキスタンでは従来の穏健なイスラム体系が崩れ、より拘束的な信仰形態に移行しつつあります。

さらに、2015年までISが使用していたテキストは、サウジで教科書として使用されているもので、このテキストで学んだ多くの若者がジハードや自爆テロに駆り立てられてきました。

ISへのバックアップはこのような思想的なものにとどまりません。

経済的な支援もサウジ国内から行われているとされています。

その裏付けとして、リークされたヒラリー・クリントン氏のメールには「われわれはサウジとカタールが秘密裏に行っているISへの経済的後方支援を抑止しなければならない」という記述もありました。

公的な政府による支援に関する証拠はありませんが、サウジの民間団体や王室に近い個人が過去に支援を行ったと思われています。

このような思想面、金銭面ともにISを後方支援した経緯から、「サウジアラビアはISの父親だ」とまで形容されています。

一方で、サウジはアメリカと対テロ同盟を結び、アルカイダ系組織やISなどのテロを抑圧する動きも見せています。

手に負えなくなったISの矛先がサウジ自身に向くことを恐れたためです。

実際、ISはサウジ政府をイスラムの裏切り者として、少なくとも表向きは敵視していて、両者の関係性は一枚岩ではありません。

でも、2001年のアメリカでの同時多発テロで飛行機をハイジャックしたとされている19人の実行犯のうち、15人がサウジの出身だということや、シリアでのアルカイダ系反政府勢力への資金と武器の援助などからも、サウジの「対テロ国家」の肩書が建前に過ぎないことは明らかです。

サウジの実態を無視する世界

さて、最後に、このような国家の実態を黙認し、同盟を組み、あるいは積極的に支援を行っている世界の現状について考えてみましょう。

石油、オイルマネー、武器ビジネス

サウジアラビアの世界最悪レベルの人権侵害が容認されている理由は、石油と、そこから生まれるオイルマネーの投資、武器の取引先としての期待の主に3つです。

特に、アメリカ・イギリスの軍需産業と、サウジの石油産業は密接に結びついています。

2015年にはイギリスの軍事輸出額の83%をサウジが占め、トランプ政権とサウジの軍需契約は1,000億ドル以上にのぼりました。

さきほど書いたイエメンの紛争でサウジ率いる空爆をバックアップしているのも、アメリカ・イギリスです。

空爆で使用されたクラスター爆弾もアメリカ・イギリスから供給されたものですが、これらも、同様にこの紛争で使用されている地雷も、世界の大半の国家が署名した国際条約で使用が禁止されています。

日本の石油輸入量1位もサウジです。

こういった大国を味方につけたサウジの行為は、たとえ国連であっても対応は難しいです。

実際にイエメンの壊滅的な状況を受けて、前国連事務総長はサウジアラビアを「子どもの人権を侵害している国家」としてブラックリストに登録しましたが、同国から拠出金の停止を脅迫され、わずか一週間で抹消しました。

サウジの石油利権をめぐって、世界中のアクターから莫大な金と武器が動いていて、国際平和に貢献するはずの国連の機関さえ、サウジの拠出金の前では無力です。

詳しくは、世界の紛争はなぜ続く?闇すぎる武器ビジネスとは?の記事を読んでみてください。

コラム

みなさん、サウジがこんな人権侵害がひどい国って知ってましたか?

2021年6月15日現在、G7の一連の報道に、各国、中国のウイグル自治区人権侵害に対しての非難は活発にしながら、サウジの人権侵害、そしてG7各国の武器ビジネス含めたサウジとの密接な関わりについてはなにも触れないんだな・・と、冷ややかな気持ちで見ていました。

世界の産業が石油に依存している限り、石油資源は大きなパワーとなってサウジの暴政に拍車をかけます。

豊かな生活の裏に潜むものに目を向けていかなければ、この問題を解決できる日は来ないんじゃないでしょうか。

歓迎を受けるトランプ大統領(サウジアラビア)
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