2023年伝えられなかった国際ニューストップ10(前半)

みなさんこんにちは、コクレポです。

国際報道部で働きながらも、これは大きなニュースなのに、報道なかなかできていないな、と思うニュースはたくさんありました。

ガザやウクライナだけではなく、知ってほしい国際問題トップ10を紹介します。

第1位 G20諸国で化石燃料に対する補助金が急増

2023年の持続可能な開発に関する国際研究所(IISD)の調査によると、2022年、G20諸国が化石燃料に対して1兆米ドルを超える補助金を投入したことが明らかになりました。

これは、2021年に比べておよそ4倍です。

補助金は主に消費者向けと生産者向けの2種類であるんですが、今回急増したのは消費者に対する補助金です。補助金の目的は、ロシアによるウクライナへの侵攻とその後の対ロシア経済制裁によって、化石燃料価格が高騰したことに対して、販売価格を維持するためです。

ただこの方針は、2009年の化石燃料補助金の段階的廃止を決めたG20での取り決めと逆行している、と非難されています。

化石燃料補助金は、価格上昇の影響を受ける人々を支援するために必要だという見解もたしかに分かりますが、化石燃料を使い続けるインセンティブを生み出してしまいますよね。

しかしさらに私がびっくりしたニュースは、2023年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催された国連気候変動枠組条約第28 回締約国会議(COP28)では、なんとUAEの国営石油会社の最高経営責任者、スルタン・アル・ジャベル氏が議長を務めていたんです。

さらに、さらに。この会議中に、国営の石油・ガス会社の取引を促進していたんです。

また、COP28には化石燃料関連企業のロビイストが少なくとも2,456人参加したと見られており、過去最多の人数となりました。

これはGuardianやCNNなどではわりと報じられていたのに、日本では”COP開催”の事実だけが報じられて、この点を指摘するものは見られませんでした。

第2位 サウジアラビア国境警備隊による移民の虐殺、数百人が犠牲に

サウジアラビア国境警備隊が、イエメンとサウジアラビアの国境を越えようとしたエチオピア人移民・難民の集団に向けて無差別に発砲し、殺害してきたことが人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によって判明しました。

死亡者数は、2022年3月から2023年6月の間で少なくとも665人、多ければなんと数千人。

報告書によると、紛争や貧困を理由に、エチオピアから多くの人がイエメンを経由してサウジアラビアに入っていて、およそ75万人のエチオピア人が働いています。

しかし、生存者の証言などによると、国境を越える際、女性や子どもを含め至近距離で射殺されたり、バラバラに切断された遺体が放置されたりしていたといいます。

サウジアラビアは近年、クリスティアーノ・ロナウド選手などサッカーの世界的なスター選手との契約や、日本のアニメイベントなど、エンタメやスポーツイベントの開催に多額の投資をしてイメージアップをはかっています。

しかし、それらは移民殺害といった人権侵害から国内外の批判の目をそらすためだと報告書は指摘しています。

このコクレポでも、何度もサウジによる空爆でイエメン人道状況が世界最悪であることを書いてますので、ぜひ読んでください。

これはBBCではしっかり報じられていました。ガザも本当に多くの子供たちが無差別に殺害されていてイスラエルは非難されていますが、サウジもこんなに多くの市民を無差別に殺しているのなら、日本も各局、報道する必要があると思います。

第3位 世界の教師不足が4,400万人に SDGs目標達成不可能

現在、世界には学校に通えていない子どもが8,400万人もいると推定されています。

原因は、長引く紛争や貧困、インフラの不整備など様々ですが、ひとつに教師不足が挙げられます。2023年10月の国連教育科学文化機関(UNESCO)の発表によると、世界で4,400万人の教師が不足しています。

教師不足の原因は地域によってバラバラで、たとえば教師不足が最も顕著なサハラ以南アフリカでは、教育に対して十分な予算がつけられていないことが最大の原因です。

一方、ヨーロッパと北アメリカでは、労働条件や給与への不満による離職率の高さが主な原因のひとつです。

これ、なにが問題なのかというと、このような状況で、すでに持続可能な開発目標(SDGs)のゴール4「質の高い教育をみんなに」の目標到達は不可能ということです。

というのも、ゴール4のターゲット、”2030年までに全ての子どもが中等教育を修了”できるようにするためには2021年までに小学校に入学する必要があるんです。

私は、もうすでにSDGs達成ができない事実が出てしまっていることを知らなかったので衝撃でした。

第4位 イラク、100年間で最悪の水不足

イラクでは、ここ100年間で最悪の水不足が起こっています。

この水不足は、農民の約60%に影響を与えていると言われています。

具体的には耕地が大きく減少し、家畜や魚が死亡するなどの被害を受けています。

このような深刻な水不足に陥った原因は様々で、気候変動などによる干ばつや石油採掘の際に多くの水を使用する石油産業の過剰化、長期間にわたる紛争などが挙げられます。

紛争については、1990年代の湾岸戦争とその後のサダム・フセイン政権に対する経済制裁や2003年のアメリカによる侵攻、2014年のイスラム国の台頭などがあります。

また、紛争によるインフラの破壊や政情不安、他にも根強く残る汚職などが、水管理政策の不備にも影響を与えています。

他にも、クルディスタン地域では人口の急増も原因の一つとされています。

また、上流諸国との関係も水不足に大きな影響を与えています。

イラクにも流れるティグリス川とユーフラテス川の上流及び支流に位置するトルコとイランでは、新たなダムの建設が行われています。

実際に、1975年に比べ、トルコからイラクへの水の流入は約80%も減少しています。

2024年2月現在、アメリカがイラクに空爆するなどのニュースを見ますが、そういうとき、一見、軍事施設だけがターゲットにみえても、このような政情不安が市民のインフラをさらに悪化させるのかもしれない、そういう視点もとりこんだニュースにしていきたい、と感じています。

第5位 結核薬のジェネリック製薬が可能に

これは防げるはずの病気で亡くなる人が世界で大勢いるなかで、一つの明るいビッグニュースです。

2023年9月、世界の中低所得国134カ国で多剤耐性結核に対して使われる結核薬ベダキリンのジェネリック製薬が可能になりました。世界最大の製薬会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が結核薬ベダキリンの特許を放棄したんです。

結核とは、細菌によって引き起こされ、空気を介して感染が広がる三大感染症のひとつで、これが原因で2022年もなお世界中で130万人もの人が亡くなっています。

この結核は抗生物質で治療可能です。

そのため、治療薬のジェネリック化は、多剤耐性結核患者の4人に3人に相当する、45万人に影響を与えると予測されています。

結核薬のジェネリック化は、2023年3月にインドの知的財産控訴委員会 がJ&Jによるベダキリンの特許延長申請を却下したことが契機です。

その後国境なき医師団などからJ&Jに特許延長申請取り下げ要請などが行われたことで、J&Jが中低所得国での延長特許を放棄することを発表しました。

近年まで6ヶ月あたりの薬剤価格が400米ドルだったベダキリンは、2023年8月に130米ドルに下がりました。

特許放棄によりさらに80米ドル〜102米ドルに下がる見込みとされています。

一方で、日本の製薬会社、大塚製薬は別の結核治療薬の特許を未だ所持していて、それを放棄することが求められています。

世界の公衆衛生の問題と、こういった製薬会社の特許の問題は密接に絡んでいて、今後の改善を期待しています。

残りは次回!

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