報道されない人種差別(1)

みなさんこんにちは、コクレポです。

みなさんは人種差別と聞いてどんな問題が思い浮かびますか?

おととい3月16日、アメリカでの銃撃事件でアジア系6人が死亡するなど、アジア人への差別事件がアメリカで増えていると大きなニュースになりました。

また、ジョージフロイドさんの死でアメリカの黒人差別についても大きく報道されていて、Black Lives Matterという言葉がよく聞かれました。

File:George Floyd Memorial at Chicago Avenue & 38th Street (49953285551).jpg

このような事件は大きく報道されましたが、果たしてこれでメディアが世界における人種差別の現状を、包括的かつ客観的に映し出せているんでしょうか?

世界における人種差別問題と日本における人種差別報道について詳しく見ていきましょう。

人種差別って?

そもそも、人種差別ってなに?って聞かれたとき、みなさんはなんて答えますか?

人種差別は意味が1つびしっと決まっているわけではなくて、肌の色、民族、階級、国籍など、差別の対象となる背景はさまざまで、どんな違いも差別の要因となりえます

最近の報道で、人種差別が強まっているというイメージを持っている人もいるかもしれません。

実際、専門家や国連でも、排外主義が「世界中で」強まっていると言う人もいます。

でも、実際に「世界中で」排外主義が強まっているといえるんでしょうか?

世界各地で行われている調査では、北部を除くヨーロッパでは人種差別は増えていますが、世界全体で増えているとは必ずしも言えず、また減っている地域も多いんです。

また、注目の対象になっている欧米よりもむしろ、南アジアや中東・北アフリカの方において人種差別意識が強いというデータも存在します。

たとえば、南アジアでは、約2億6,000万人がカーストによる差別の影響を受けておいて、欧米以上に差別が深刻な地域も多数存在します。

このような人種差別に関するイメージと現実のギャップはなぜ生まれるんでしょうか。私たちのイメージを形成する報道に問題があるのかもしれません。

これらをひもとくために、GNVが集めた実際のデータを基に、日本でどのような人種差別報道がなされているのか、詳しく見ていきましょう。

日本で報道される人種差別

GNVが朝日新聞の20年間(1999年~2018年)の「人種差別」報道を分析(※1)しています。

下のグラフから分かるように、人種差別が強まっているイメージと同様に、ヨーロッパにおいて移民や難民が増加やトランプ氏の台頭、欧州政治の右傾化などが起こった2015年あたりを境に、人種差別の報道量が急増しています。

また、この人種差別の報道量を国ごとに分類した。下のグラフから見て分かるように、欧米、特にアメリカの報道量だけが極めて多いです。

世界では、アメリカ以外にも報道すべき地域が数多くあるにもかかわらず、人種差別報道の約半分が1つの国だけに集中しています。

また、アメリカの次に多かったのはフランスで、報道の全体の約1割を占めています。フランス国内の右傾政治やその移民政策の報道が非常に目立ちました。

ヨーロッパの他の国もトップ10に多く登場していて、全体としては約4分の1が欧州の報道でした。

また、南アフリカは、アパルトヘイト政策など歴史に関する特集記事や、南アフリカで開催された差別反対世界会議に関する記事が多くて、3番目に多い登場回数となっていました。

このように、欧米の国々が人種差別報道で登場する国の75%以上を占めるほどの偏りが明らかです。

では、人種差別関連の報道において、どのような人種差別が報道されているんでしょうか。

下のグラフは、人種差別報道の内容を被害者主体ごとに分類したものです。

グラフからも分かるように、全体を通して黒人(※2)が人種差別の被害者として書かれている記事が120件(約35%)と最も多かったです。

その黒人への差別に関する報道のうち、82件(約68%)の記事でアメリカが登場していて、大きな偏りが見られました。

またトランプ元大統領や欧州政治の右傾化によって、移民が差別の被害者として書かれている記事も54件(約16%)と多かったです。

その54件の移民への差別に関する報道のうち、なんと51件(約94%)が欧米での内容でした。

宗教の差別でいえば、イスラム教徒が差別の被害者として取り上げられている記事51件中30件(約59%)と最も多く、そのうち9件がアメリカでの出来事でした。

また、全世界の人口の0.2%にも満たないユダヤ人が20件(約6%)の記事で被害者として取り上げられていて、人口の割に報道が多かったです。 

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このように、日本で報道される人種差別報道は、欧米を主体として、「人種」、「国籍」、「宗教」などの異なるアイデンティティを持つ人々への差別にスポットライトが当てられています。

私たちの世界の人種差別のイメージがアメリカのアジア人差別や黒人差別、イスラム教への差別などが強いのは、このように、日本の国際報道が欧米に偏っているからではないでしょうか?

日本のメディアが先進国を中心に取り上げて、貧困国をないがしろにする傾向が見て取れます。

では、報道されない人種差別の実態はどのようなものなんでしょう?

過去の歴史ではない、いまも続いている奴隷貿易や、改宗したら死刑となる制度など、次回記事で詳しく解説していきます。

※1: 「聞蔵Ⅱビジュアル」にて、検索ワード「人種差別」、紙面:国際面、【本紙】と【地域面】の発行社は【東京】を選択、期間:1999年~2018年の条件で検索した結果から算出したもの。

※2: 本記事中の人種を表す用語は朝日新聞の記事中の言及によるもの。

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