報道されない人種差別(2)

前回記事では、人種差別とはなにか、そして日本の国際報道がどれだけ偏ってるかをみましたね。

では、日本で報道されない人種差別とはどのようなものなんでしょうか?

差別が蔓延しているのに、ほとんど報道されていない地域の現状を詳しく見ていきましょう。

南アジアの報道されない人種差別

みなさん聞いたことある人も多いと思いますが、南アジアには、カースト制度があります。

南アジア(モルディブも含む)

カースト制度では、人々を4つの階級に分けて、社会的地位だけではなく、職業、結婚相手なども階級によって決めるべきという差別が根底から根付いています。

さらに4つの階級とは別に、「ダリット(Dalit)」という最下層の不可触賤民とよばれる人々がいて、残虐行為の対象となっています。

現在、南アジアの約2億6,000万人がカーストによる差別の影響を受けていて、市民権や政治的、経済的、社会的、文化的権利が侵害されています。

中東・北アフリカの報道されない人種差別

中東・北アフリカの人種差別といえば、イスラエル・パレスチナ問題が思い浮かぶ人が多いんじゃないでしょうか。

実際、イスラエルによるアラブ系住民・パレスチナ人への差別の報道がほとんどです。

でもこの地域はこの問題以外にも、さまざまな差別関連の問題があります。

たとえば、建設業や家政婦などの仕事で中東に来る出稼ぎ労働者や難民への差別・虐待は深刻です。

出稼ぎ労働者の賃金はとても低く、同意していない奴隷のような労働をさせられていることが報告されています。

また、2022年のカタールワールドカップの建設中に、4,000人以上の低賃金労働者が亡くなるという予測も出ています。

また、サウジアラビアでは、スンニ派イスラム以外の信者への差別や抑圧がとても強いです。

神への冒とくやイスラム以外の宗教への改宗は、死刑に処するという法律制度になっています。

北アフリカでも人種差別はたくさん残っています。

エジプトでは、少数民族やサハラ以南のアフリカ出身の出稼ぎ労働者、難民などへの差別が深刻で、肌が黒いほど差別が激しくなると言われています。

またリビアでは、奴隷貿易が行われています。リビアは移民や難民の経由地になっていて、そこで取り締まりを受け拘留された人々が、「奴隷市場」で奴隷としてオークションに売買されて、強制労働を強いられることがあります。

Libyan Slave Trade: Here's What You Need to Know | Time

このように、中東・北アフリカ諸国で悲惨な人種差別が存在するにもかかわらず、今回収集した中東・北アフリカの25件の人種差別に関する記事の中には、これらの事情に言及したものはありませんでした。

中南米の報道されない人種差別

中南米には過去に奴隷として連れてこられた歴史もあって、アフリカ系の子孫が多く生活しています。

このような黒人が人口の大きな割合を占める中南米においても、依然として人種差別が問題視されています。

ブラジルでは、人口の50.7%が黒人あるいは黒人を含む複数の人種が入り混じった人々ですが、白人と比べて教育水準や賃金が低い傾向があります。

コロンビアでも、最貧困層にアフリカ系の人々が多く、紛争時にも多くのアフリカ系の人々が強制立ち退きを命じられるなど、卑劣な扱いを受けています。

また、グアテマラやボリビアでも、アフリカ系や先住民の人々は経済面や教育面、雇用面などにおいて白人の人に比べて差別的な処遇を受けています。

中南米で見られるこのような肌の色によって社会的地位が変わる現象をピグメントクラシー(pigmentocracy)といいます。

これらの差別に対して、各国では生活水準を改善するための政策や、人種差別撤廃のための法案も実施されてきましたが、まだラテンアメリカのアフリカ系の人々に対する経済面や教育面などにおける差別は残っています。

しかし、アメリカでの黒人差別が黒人差別報道全体の120記事中82記事(約68%)であるのに対して、中南米での黒人差別は1つの記事でしか言及されていませんでした。

コラム

このように、日本では報道されない世界において、今日も多くの人種差別問題が残っています。

過去の歴史と思っていた奴隷貿易がいまも行われていたり、改宗したら死刑、などこれがアメリカやヨーロッパで起きていたらもっと大きく報道されるはずなのに、ただ国が違うというだけで報道されないのが現状です。

報道されていない地域には、欧米以上に差別意識が強く、悲惨な出来事が起こっていて、明らかに私達が普段目にする情報と現実との間にギャップが存在しています。

日本の報道の偏りによって、「世界」の人種差別のイメージが、「欧米」での人種差別報道のイメージによって形成されてしまっていて、欧米を主体としてしか人種差別問題について知ることができていません。

人種差別の撲滅に向けて、まずは世界の人種差別の現状を客観的かつ包括的に知ることが大切だとおもいます。

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