G7の闇:日本のメディアが伝えない問題点とは?影響力の低下・大規模デモ

こんにちは、コクレポです。

2023年5月17日~19日の3日間にわたって、G7(Group of 7)サミットが日本の広島で開催されますね。

G7とは、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、日本、フランスの7カ国と、EUのそれぞれの首脳が集まって毎年開かれる国際会議で、「世界経済、地域情勢、様々な地球規模問題を始めとするその時々の国際社会における重要な課題」について話し合うことを目的として掲げています。

でも、世界ではG7に対し、世界全体が抱える問題の解決を目指すのではなく、参加国自身の利益を追求し、自身の権力と影響力を維持するための集まりと主張するなど、様々な疑問が挙げられていること知っていますか?

今回は、G7の存在とそれが抱える問題について目を向けてみましょう。

2023年4月16日から18日に日本の長野県軽井沢で開催されたG7外相会合の様子(UK Government / Flickr [CC BY 2.0]

G7の沿革

そもそも、G7はどのような経緯で発足したのか知っていますか?

そのきっかけは、1970年代にまで遡ります。

この年代では、1973年の第一次石油危機など、世界中に大きな影響を与える出来事が多発しました。

その状況下で、自身たちが抱える問題に対処するため、西側の国々の間で、首脳レベルでの経済、政治、エネルギーなどについて、政策協調の議論の場が必要であるというが上がります。

そうした理由から、1975年、当時のフランス大統領であるジスカール・デスタン氏の提案で、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、日本、フランスの6カ国の首脳がフランスのランブイエ城に集まり、第1回サミット(G6)が行われました。

そこでは石油危機や金融危機、不況からの脱却について話し合われました。

また、それと同時に今後の経済問題に対処するため、毎年集まって政策などについて話し合う場の重要性が再認識され、以降は各国が持ち回りで議長国を務めるようになりました。

翌1976年の第2回からはカナダが参加するようになり、以降はG7と呼ばれるようになりました。

また、冷戦が終結しソ連が崩壊した後の1991年からサミットの枠外でロシアとも会合を開くようになり、その後ロシアは徐々にG7の会議にも参加するようになります。

そして1997年になるとロシアは全日程に参加するようになりました。

翌1998年から2014年の間はG7にロシアを加えた8カ国が集まって毎年会議が開かれることとなり、G8と呼ばれるようになりました。

しかし、2014年、ロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻したことを受け、ロシア以外の7か国で緊急でG7が開かれ、そこでロシアのG8への参加資格を停止する決定がなされ、それ以降はロシア以外の7か国で再びG7として会議が開かれています。

何の集まり?

では、G7自体の問題について見てみましょう。

まず1つ目の問題として、G7の参加国の参加基準、そしてその代表性の問題があります。

G7は、紹介したとおり1975年に世界の様々な問題を多国間で議論するために経済力の強い西側諸国の集まりから始まりました。

かつては世界全体のGDPのうち最大で70%をG7の国々が占めていましたが、21世紀に入るとその割合は低下し、2021年時点ではその割合は30%にまで低下しています。

それに対し、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの経済成長著しい5カ国で構成されるBRICSのGDPは大きく成長し、世界全体で占める割合も増え、2023年にはG7よりも多くの割合を占めるようになった、というデータさえあります。

また、国別のGDPを見ても、例えば中国は2010年に日本を抜いて以降アメリカに次ぐ世界2位となり、またインドも2015年にイタリアのGDPを上回り、2022年にはフランスやイタリア、カナダを上回って6位にランクインし、イタリアやカナダよりおよそ1.5倍多いなど大きな差をつけています。

BRICS各国の首脳たち(MEAphotogallery / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])

そんな中で、G7のメンバーはロシア以外どの国も新たに加入することなく、ずっと固定のメンバーとなっています。

G7は「主要国」の首脳の会議とされていますが、果たしてその「主要国」の基準はいかなるものなのでしょうか。

経済力主要国がポイントになるなら、GDPで見ると世界2位の中国や6位のインドがメンバー外なのに対しその2ヶ国よりGDPが相対的に低いイタリアやカナダはメンバーに入っていることの説明はつきません。

さらに、G7の国々が全て民主主義国家であることから民主主義も一つのポイントであるとすれば、中国が入っていないことはまだ理解できるが、G7と同様に民主主義国家であるインドがメンバー外であることの説明にはなりません。

ただ、インドや中国は過去に議長国の判断で招待され、その年のG7に参加する招待国としてG7に参加したことが何度かあります。ただ、正式なメンバーにはなっていません。

また、G7を拡大しようとする動きが無いわけではありません。

2020年にその年の議長国アメリカのトランプ大統領によって韓国、オーストラリア、インドをG7のメンバーにする提案が、翌2021年にはその年の議長国イギリスのボリス・ジョンソン首相が韓国、オーストラリア、インドをメンバーに加える提案をしましたが、両年の提案とも他のG7の国々の反対によって実現することはありませんでした。

G7という存在は、経済力や民主主義が基準に基づいた「主要国」ではなく、西側諸国のみの「主要国」の集まりとなっているんでしょうか。

2022年のG7に参加するインドのナレンドラ・モディ首相(中央)とイギリスのボリス・ジョンソン首相(左)(Number 10 / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0]

G7の影響力

2つ目に問題は、G7が持つ影響力についてです。

G7では経済や政治、国際情勢など様々な課題について話し合うとされていますが、その議題や結論がG7各国に利益を及ぼすものが多々ある、というものです。

そして、そのようにしてまとまった結論がG20などの他の国際的な集まりにも影響し、他の国がその結論に続いていく、という状況になるんです。

その一例が、法人税に関するものです。

事の発端は、2021年6月のG7財務相会議で、企業の本所在地がどこにあるかに関わらず、最低15%の法人税を企業に課すことが合意されたことです。

そして、この合意は翌月の7月にイタリアで行われたG20においても議題としてあげられ、中国やロシア、インドといったG20の国々も大きく影響を受ける事態となり、最終的にはG20の参加国全てが同様の法人税の協定に合意することになりました。

そして、その3ヶ月後の2021年10月には130の国と地域が同様の協定への合意を迫られ、最終的に合意したことが発表されました。

このように、G7内での決定が世界全体に影響を与え、G7からG20、そしてそれ以外の様々な世界の国々と議題が引き継がれるトップダウン型の構図ができあがっています。

つまり、国連の総会や経済社会理事会など全世界の国が民主的に参加するような場ではなく、経済力の強い西側7カ国の話し合いの場での取り決めが全世界にも適用されたんです。

記者からの質問に答えるイギリスのリシ・スナク現首相(HM Treasury / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0]

また、その影響力は日本のメディアに対しても大きいです。

G7で取り上げられた問題をメディアは注目し、その結果として報道量が大きく増えた例がいくつもありました。

その中でも大きな例が、海洋プラスチックに関するものです。

2018年のカナダでのサミットで、プラスチックゴミの問題が議題にあげられ、アメリカと日本を除く5カ国にプラスチックによる海洋汚染問題への対応を促す海洋プラスチック憲章が発行されました。

このG7サミットがきっかけとなり、それまで日本ではほとんど報道されていなかったプラスチックに関する問題が注目されるようになり、2017年以前と比べると大幅に報道量が増加しました。

さらに、アフリカの貧困についてもG7がきっかけで日本のメディアに注目された例として挙げられます。

2005年のG7サミットでは、アフリカの貧困、債務問題が主要なテーマとされ、大きな注目を集めた。そして、それはメディアも同様であり、この年のアフリカの貧困に関する報道の量は大きく増加しまし。

しかし、この問題はサミットが行われた当時には大きく報道されたものの、その後問題自体は解決していないのに報道量が激減しています。

このように、今はG7で取り上げられたことをきっかけとしてメディアが課題に注目していますが、これは本来のメディアの姿とは異なるのではないでしょうか。

本来ならメディアは、社会が抱える問題を取り上げ、その問題に注目を集めることで行政や国家に改善、改革を働きかけるという役割が求められてきました。

今はこの順序が逆になり、メディアがエリートな国や組織を追う傾向がここでも見られています。

G7に対するデモ

経済力のある西側諸国で構成され、自身の利益を追求しながら世界に大きな影響力を及ぼすG7に対し、市民社会などで不満がたまり、その結果G7に対するデモも数多く起こっています。

特に激しかったのは、2001年にイタリアのジェノバで行われたサミットへの反対デモです。

このデモは、グローバル化や資本主義のあり方に不満を持つ集団によって、サミット会場であるイタリアの都市ジェノバで行われ、デモ隊はおよそ20万人に及ぶ大規模なものになりました。

そして、このデモ隊は機動隊と衝突し、そこで多数の負傷者を出す事態となりました。

また、デモに参加していたある23歳の青年が射殺されるなど、G7に対するデモとして初めての死者を出す事態にもなったんです。

また、2015年にドイツで行われた反G7デモも大規模なものでした。

このデモは、G7各国に対し貧困や気候変動などの問題の解決を求めたもので、数千人の群衆が集まりました。

このデモでも、デモ隊と機動隊の衝突が起こり、機動隊が催涙スプレーなどを使用し、多数の負傷者を出す事態となりました。

さらに、同じくドイツでG7が開催された2022年にも、ロシアのウクライナ侵攻への不安と化石燃料からのエネルギー転換を訴えるデモが起こっていて、約4,000人の群衆がミュンヘンに集まりました。

2022年のドイツでのデモの様子(cmpact / Flickr [CC BY-NC 2.0]

コラム

元から西側諸国の利益を追求するために作られたG7は、世界における影響力を失いつつあります。

「主要国首脳会議」という名称も含めて、G7の意義を見つめ直す時期が来たのではないでしょうか?

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