仮想通貨が途上国の経済を救う!?

みなさんこんにちは、コクレポです。

最近またビットコインの価格が大きく上がったりして、仮想通貨が人気になってますよね。

途上国でも仮想通貨の利用が増えてるんです。

その背景には一体何があるんでしょうか?

今回は仮想通貨が世界一のハイパーインフレになったジンバブエ経済を立て直せるのか、解説したいと思います。

ジンバブエの歴史

ジンバブエで仮想通貨の使用が増加している背景として、ジンバブエの危機的な経済状況があります。

どうしてジンバブエは経済危機に陥ってしまったのか、それを知るためにまず、ジンバブエの歴史を振り返ってみましょう。

南ローデシア(イギリス植民地)時代

ジンバブエはむかし、南ローデシアと呼ばれたイギリスの植民地でした。

イギリスからの入植者が多く、彼らは現地の農地を独占するようになりました。

また、当時は白人の少数派で構成される政府が南ローデシアを支配していました。

1960年代、アフリカでの植民地が次から次へと独立し、イギリスが南ローデシアの独立を認めるのは時間の問題になりました。

それを恐れた現地の指導者イアン・スミス氏が、1965年に白人支配のまま一方的に独立を宣言しました。

宣言は国内外からの反感を買い、国内では白人支配に対する戦争が勃発しました。

ジンバブエ独立

1979年に停戦し、1980年に正式にジンバブエとして独立を果たしました。

また、独立を求めた主要勢力のひとつであるザヌの指導者ロバート・ムガベ氏が選挙で当選し、独立したジンバブエの最初の首相になりました。

1982年ジンバブエ大統領ロバート・ムガベ氏(写真:Hans van Dijk・Anefo/Wikimedia[CC0 1.0])

当初ムガベ氏は、野党勢力を軍事手段で制圧したものの、国民の利益を重視する姿勢も見せ、教育や健康に積極的に取り組みました。

また、国内では製造業と農産物の輸出が増加していました。

そして議院内閣制から大統領制へと政体が移行し、1987年に大統領に就任しました。

 一見順調に思えたムガベ政権でしたが、1990年代にムガベ大統領が行った政策が国内の経済状況を一変させてしまいます。

ムガベの政策

植民地支配により白人が土地の大半を持っていた当時の状況を改善することを目的とし、政府は農地改革を打ち出しました。

そして、その改革の一環として1992年に「土地取得法」を制定しました。

これは土地所有者からその土地を強制的に買い取ることができるというものです。

しかし、これは白人地主から強い反対を受けたうえに、ジンバブエがイギリスに対して求めていた土地再分配のための賠償金も拒否される事態となりました。

そこでムガベ大統領は強硬姿勢をとることにしました。

2000年に政府の後押しのもと、多くの独占戦争の退役軍人が白人の土地を占領し、土地所有者を追放したんです。

ムガベ大統領が行ったこの農地改革によって、多くの白人地主が土地を放棄させられ、結果的に農業生産高は大幅に減少しました。

 また、1998年にコンゴ民主共和国での戦争へと軍を派遣したことも経済状況を悪化させる一因となりました。

さらにその後、不作と乾燥が原因で飢饉が起こりました。

農業生産の低下に伴う輸出の減少によってジンバブエの財政は悪化し、中央銀行は輸入資金を調達するために紙幣を増刷しましたが、その結果インフレが起こってしまいました。

ジンバブエのインフレ率は急上昇しハイパーインフレになり、2008年にはインフレ率が2億パーセントを超えピークに達しました。

ハイパーインフレと海外積立投資
ジンバブエハイパーインフレ

経済危機に陥ったジンバブエ

経済状況が悪化しインフレ率がピークに達したジンバブエは、2009年にとうとう通貨であるジンバブエドルを放棄することを決定しました。

そして、法律上で定められた9つの外貨(米ドル、オーストラリアドル、南アフリカランド、ボツワナプラ、ユーロ、英ポンド、日本円、中国元、インドルピー)を使用して取引を行うことになりました。

この決定で、経済はいったん回復の兆しを見せました。

でも、輸出の低下や投資の減少、さらに干ばつなどの影響もあって、ジンバブエ国内は再び深刻な経済危機に陥りました。

ジンバブエ政府はこうした現金不足を緩和し、現金が国外に流出するのを防ぐために、2016年に債券の印刷を始めました

政府は当初、米ドルと同じ価値に固定したと言ってましたが、国民からの信頼は得られず、その価値は低下し、再びインフレになりました。

そんな中、2017年に軍によるクーデターが発生しました。

結果、長年続いたムガベ政権が崩壊、当時93歳だったムガベ氏に変わり副大統領だったエマーソン・ムナンガグワ氏が大統領に就任しました。

その後、外貨での給与支払いを労働者組合が求めましたが、2019年に政府は外貨の使用を禁止し再びジンバブエドルの導入を決定しました。

でも、またもや通貨の価値は急落し再びインフレに陥りました。

インフレの影響で国内の物価は上昇し続け、特に燃料や食料、医療品などの不足や高騰が深刻化しました。

そうした中で、悪化する国内の経済状況を改善することのできる手段として、期待が高まっていったのが仮想通貨なんです。

信頼を失いその価値が低下し続ける国内通貨よりも、ずっと安定した取引ができるとして、使う人が増えていったんです。

ジンバブエドルの10兆ドル札の札束を手に持つ女性(写真:DJANDYW.COM AKA NOBODY/Flickr[CCBY-SA2.0])

仮想通貨とは?

では、そもそも仮想通貨とはいったいなんなんでしょう?

仮想通貨はネット上での取引を行う際に利用可能な通貨で、通常の通貨とは違って物理的な形では存在していません。

代表的な仮想通貨としては、ビットコインイーサリアムなどがあります。

また、仮想通貨を理解するうえで重要なのがブロックチェーンという技術です。

これは仮想通貨を支えるコア技術で、仮想通貨での取引を記録する役目を担ってます。

このブロックチェーンという技術にはいくつかの特徴があります。

仮想通貨のメリット

最大の特徴は、複数のコンピュータで分散して取引を管理していることです。

取引データをネットワーク上に公開することで、この分散管理が可能で、複数のコンピュータで管理することで権限が1カ所に集中することなく管理できます。

また、データの改ざんや不正な記録を排除することもできます。

さらに、法定通貨の取引のように銀行や金融業者を介する必要がないため、取引の際に銀行や金融業者の介入を排除でき、取引にかかるコストを削減することができるんです。

また、同様に政府の関与や政策による影響を防ぐことも出来るので安定した取引を行うことが可能である。

また、仮想通貨はオンライン上の通貨なので、物理的な通貨を製造する必要がありません。

仮想通貨のデメリット

逆に仮想通貨の弱点は、1つ目に、価値が変動しやすいことです。

仮想通貨は全体としての発行量が決まっていて、それに対する需要と供給に応じて価格が決定されます。

そのため常に価格が変動しているんです。

また、多くの人々が仮想通貨を株式と同様に金融取引・投機の対象としているため、大きく価格が変動してしまうこともあります。

2つ目は、店舗が認めないと使えないという点です。

法定通貨と違って、中央銀行の管理を受けていない仮想通貨は、実際に取引を行う店舗がその価値を認めないと決済手段として機能しません。

決済手段として利用できる状況が限定されているんです。

3つ目は規制が整備されていない点です。

仮想通貨は、詐欺やハッキング、マネーロンダリングなど悪用される危険性があります。

そうした危険性を回避するために規制や法を整備する必要がありますが、仮想通貨についての制度が整っている国や地域は少なく、法的地位も不明な場合が多いため、仮想通貨の使用にリスクが伴ってしまいます。

このように仮想通貨にはメリット・デメリット両方があります。

仮想通貨の価格指数(写真:QuoteInspector[CC BY-ND 4.0])

ジンバブエにおける仮想通貨の増加

ジンバブエが危機的な経済状況に陥ってしまったので、国民の間では仮想通貨が多く使用されるようになりました。

政府が推奨する通貨の価値は急落し、現金も不足している状況で、仮想通貨の方が安定した価値をもって取引できると考えたんですね。

ではそうしたジンバブエ国内での仮想通貨導入の動きは、具体的にどのようなものがあるんでしょうか?

ビットコインATM

注目すべき動きとしては、2018年にアフリカで仮想通貨取引のサービスを提供するゴリックス社 (Golix)によるビットコインATMの導入です。

ビットコインATMは、現金やデビットカードを使用してビットコインを購入できるATMです。

仕組みは普段のATMと同じで、これを使用すると仮想通貨から現金できます。

また、国内ではビットコイン以外にもいくつかの新しい仮想通貨が導入されています。

ビットコインATMは日本のどこにある?設置場所から使い方まで調査してみた | CRIPCY
ビットコインATM

スパート(SPURT)

たとえば、スパート(SPURT)という仮想通貨です。

これはコミュニティーのために企画された共同プロジェクトで農作業や建設作業に参加する人が、現金ではなく、スパートを受け取る仕組みです。

スパートはサウンドプロスペリティという会社が管理していて、この会社のプロジェクトに携わった時間に応じて報酬としてスパートが支払われます。

この仮想通貨は2019年時点で約4万人のジンバブエ国民に使用されています。

通貨としての価値を認めている店や企業が少ないですが、コミュニティー内での購入は可能です。

SPURTをスマホで使っている

ジンボキャッシュ(Zimbocash)

また2019年に登場したジンボキャッシュ(Zimbocash)もジンバブエで注目されている仮想通貨の1つです。

この仮想通貨は、外部からの投機による激しい価値変動を防止するために、ジンバブエ人のみが登録・使用することができ、登録するとはじめに一定額の仮想通貨を無償で受け取ることができます。

これによって多くのジンバブエ人がこの仮想通貨を使用することに前向きになり、利用が普及することでその通貨の価値を安定させることができるという仕組みです。

このようにジンバブエ国内では政府や銀行に認可されてはいないものの、さまざまな仮想通貨が登場し使用されるようになってきています。

ジンバブエ準備銀行(写真:Baynham Goredema/Wikimedia[CC BY 2.0])

仮想通貨の問題改善

価格の不安定さや規制の不整備はやっぱり大きな問題です。

世界ではこうした問題の解決に向かう1つの大きな動きとして、2019年にFATF(Financial Action Task Force)が仮想通貨の使用に関する新しい国際基準を発表しました。

これを受けて世界各国が仮想通貨導入の動きを見せ始めています。

仮想通貨の問題点は徐々に改善へと向かいつつあり、さまざまな国が仮想通貨の正式な導入へと歩みを進めています。

そして、ジンバブエもそうした国のうちの1つです。

コラム

ビットコインを投資対象としてやってる・やったことがある人はいるんじゃないでしょうか?

Paypalがビットコイン導入を発表していたり、仮想通貨がだんだん「使えるもの」になってきてる波があります。

実際の通貨より信頼できるものとなれば、自国の通貨の振れ幅が大きい国では仮想通貨の方が安心して使えますよね。

だから途上国での普及はこれから爆速的に増えるかもしれません。

でも仮に仮想通貨が国内で認可され正式に導入されたとして、ジンバブエが危機的な経済状況を脱することができるわけではありません。

ジンバブエの経済状況を解決するためには仮想通貨の導入や政策だけでなく、経済活動そのものの改善が必要です。

ジンバブエだけでなく、途上国での仮想通貨の取り入れ方に、今後も注目したいと思います。

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