みなさんこんにちは、コクレポです。
みなさん、あの誰でもお金がもらえる制度、ベーシックインカムって最近聞くようになりましたよね。
私自身、とっても興味があったので、今回はこのベーシックインカムについて、賛成意見・反対意見・実施例を紹介しながら、解説したいと思います!
ベーシックインカムとは
ベーシックインカムは、簡単にいうと、所得に関係なく、全ての人に対して一定金額を給付する仕組みです。
生活困窮者だけが対象の生活保護とは違う、ということをはっきり表すために、ユニバーサル・ベーシック・インカム(Universal Basic Income)ということもあります。
「ユニバーサル」は、「普遍的」という意味ですね。特定の人々に向けたものではなくすべての人々に向けたもの、ということです。
ベーシックは、「基本的」、つまり最低限の生活を送るために必要な金額、ということです。
インカムは「収入」ですね。
つまり、ユニバーサル・ベーシック・インカム=「最低限の生活を送るために必要な、すべての人を対象とした収入」ということです。
でも、お金くれるのはいいけど、どこからそんな莫大なお金をとってくるんだろう?と思いますよね。
資金源は大きく3つあって、1つ目は国の借金、2つ目は税収、3つ目は政府外からの資金調達です。
政府外からの資金調達っていうのは、たとえば石油収入の一部から設立される基金などです。
また、ベーシックインカムに似てる概念として「負の所得税」というものがあります。
これは、1960年ごろにノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマン氏に支持された考えで、一定以下の収入に対して、収入に応じて一定の現金が給付される仕組みです。
でも、これは収入があることが前提なので、すべての人に給付するベーシックインカムとはちょっと違う考え方です。
ここからもわかるように、ベーシックインカムや、似てる概念は、昔から提唱されてきました。
ではここから、ベーシックインカムをめぐる賛否両論それぞれみていきましょう。
ベーシックインカム賛成意見
では、ベーシックインカムを支持する意見を見てみましょう。
まず、ベーシックインカムによって、一定の収入を得ることができ、貧困の減少に繋がると言われています。
また、一定の収入を保証することで、雇用されてる人は悪い条件の仕事を辞めるという決断がしやすいです。
そのため、東南アジアの海上奴隷の記事で紹介したような、雇用主が劣悪な労働条件で、従業員を雇用し続けることを防ぐことにもつながります。
その結果、雇用条件の向上などを通じた貧困減少も期待できるという意見もあります。
また、貧困減少は社会の他の側面への影響も大きいです。
一定の収入を得ることで、診察料を払うことができ、早い段階で病院の診察を受けるため、病気が深刻化する前に治療を受けることができます。
また、一定の収入を得ることで栄養状態が改善して、健康状態も改善します。
結果として、保健衛生状況は改善されると言われています。
教育に関しては、学費や教科書、制服などの教育にかかる出費をカバーでき、教育水準の向上も図ることができると期待されています。
また、収入が安定すると金銭的なプレッシャーから解放されて、家庭が安定するため、家庭内暴力などの発生が減少すると考えられています。
ベーシックインカムは貧困減少の他にも、人々の生活や社会のいろんな面で良い効果をもたらすと考えられています。
一定の収入によって生活が保障されることで、リスクを恐れずに起業する人が増加して、社会や経済に役立つ新規事業が生まれる可能性も高まります。
さらに、大人も教育や職業訓練を受けるなど、自身の将来への投資を促す効果も期待されています。
一定の収入を得られるため、人々は芸術活動やボランティア活動ができ、社会がより豊かになるとも考えられています。
さらに、社会保障制度のコスト削減・効率化につながるという考えもあります。
え?お金めっちゃかかりそうなのにコスト削減?とふしぎに感じる人もいるんじゃないでしょうか。
どういうことかというと、既存の社会保障制度は、支援目的ごとに制度がそれぞれで運営されているので、欠陥や重複がたくさん存在していて、コストが大きいうえに、支援を必要としている人に効率的に支援が行き届いていません。
たとえば、似たような状況にある家庭でも、一部の家庭は複数の社会保障制度の恩恵を受けることができるのに、他の家庭は制度の対象からこぼれ落ちて恩恵を受けられない、ということがあります。
そこで、ベーシックインカムという全員が対象の1つのシンプルな制度にまとめることで、合理的にすることができます。
さらに、既存の社会保障制度は、家計調査などに基づいて、支給をするかどうかや支給額、控除額が決定されるので、その調査や管理に大きなコストがかかっています。
ベーシックインカムはすべての人々に一律に一定の給付を与えるので、そうした調査や管理のコストがかからないんですね。
このように、ベーシックインカムは既存の社会保障制度の合理化とコスト削減に貢献できると言われています。
また、ベーシックインカムの導入によって消費が増えて、経済が潤うと報告する研究もあります。
米ルーズベルト研究所によると、アメリカの全成人に月額500米ドルを給付した場合、消費が増加して、導入から8年後にGDPが最大6.8%増加すると推定されています。
最後に、機械化やAIの導入によって、将来的に職を失う人々の収入を補えるという意見があります。
アメリカでは、2032年までに機械化によって労働者の3分の1が職を失うと予測されています。
これから、機械化やAIの導入による雇用機会の減少が起きる可能性は高く、ベーシックインカムはそれに対応できると考えられています。
ベーシックインカム反対意見
次に、ベーシックインカムに対する批判的な意見も見てみましょう。
はじめに、ベーシックインカムは人々の労働のインセンティブを排除して、多くの人を政府に依存させるだろうという批判がよくされています。
一定の収入があるなら働く必要ないじゃん!となる人増えそうですよね。
実際、ベーシックインカムの財源が税収の場合、人々が労働の意欲を失って辞職することで、労働者の税負担がさらに大きくなり、よりたくさんの人が辞職するという悪循環が想定されるため、ベーシックインカムの金額が大きくなると、自主的な辞職が加速度的に上昇するという予測もあります。
また、賛成意見の方で紹介した米ルーズベルト研究所の研究結果とは反対に、ベーシック・インカム導入によってGDPが減少するという予測も報告されています。
米ペンシルベニア大学ケント氏は、アメリカでは全ての成人に月額500米ドルのベーシックインカムを給付すると、導入から8年後までに債務は63.5%増加し、GDPが6.1%減少すると予測しています。
つまり、ベーシック・インカムのGDPへの影響に関しては意見が大きく分かれているんですね。
英バース大学で行われた予測モデルでは、ベーシックインカムは最も安く見積もったとしても、イギリスで年間約1,900億米ドル相当が必要になるといいます。
財源のいろいろな案
コストがかかることは、財源が税収の場合、国民に対する課税も大きくなるので、国民の負担が大きくなる可能性も指摘されています。
一方で、ベーシックインカムの資金調達に市民への大きな課税は必要ないという意見もあります。
たとえば、タックスヘイブンの記事で紹介したように、企業の租税回避による世界の税損失は、毎年3,300億米ドルにものぼります。
なので、企業から正しく適切に徴税すれば、多額の税損失を取り戻して、ベーシックインカムの資金になりうると考えられています。
また、世界の極端な格差に着目して、富裕層に対してさらなる課税を行うことで資金調達が可能になるという意見もあります。
現在、世界で最も裕福な人々の上位10%が世界の富の85%を所有しています。
彼らへの課税を強化して、それをベーシックインカムの財源にすれば、税の一つの機能である「富の再分配」が可能になります。
さらに、貧困の削減を第一目標とするベーシックインカムを実現するために、持続可能でない経済活動を行っている企業に対して、政府の補助金を停止することも有効だと考えられています。
たとえば、世界の化石燃料補助金は、2015年の時点で年間4.7兆米ドルにものぼります。
これは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を妨げるものであるため、補助金を停止して、資金をベーシックインカムに充てるほうが適性であるという考えもあるんですね。
ベーシックインカムには賛否両論あることがわかったと思います。
では、ベーシックインカムに近い実例をいくつか紹介します。
実施例:カナダ(マニトバ州)
カナダのマニトバ州ドーフィン市とウィニペグ市で1975~1978年「ミンカム実験」というのが実施されました。
最低所得層に該当する人や、その家族は誰でも参加資格を持ち、ウィニペグでは約1,500世帯、ドーフィンでは約600世帯を対象に、月額約250~390米ドルが給付されました。
実施例:ブラジル
2003~2010年ブラジル全土で、約1,360万世帯がベーシック・インカム(1世帯当たり月額約34米ドル相当)を受け取るボルサ・ファミリアプログラムが実施され、約4,660万人、ブラジルの全人口の約22%が給付を受けました。
このプログラムでは、家計調査に基づき、貧困家庭を対象にベーシック・インカムが給付されました。
さらに、貧困家庭であること以外にも、受給者は子供を学校に通わせることや予防接種を受けさせることなどが給付の条件でした。
この政策の導入後、国の貧困率は2003年の26.1%から2009年には14.1%に低下し、極度の貧困率は10.0%から4.8%に低下しました。
本プログラムは対照群を作ってないため、貧困減少の結果と政策との因果関係はわからないものの、本プログラムの成果がある程度貢献したことは考えられます。
資金調達源は、石油収入による収益であるため、実験は長期にわたって実施可能であると言われています。
この実験は始まったばかりでまだ結果は出ていませんが、この実験の結果が出れば、ベーシック・インカムの普及に向けた議論に大きな影響を与えそうです。
実施例:フィンランド
次に、フィンランドで行われた実験を紹介します。
2017年から2年間、フィンランドで全国からランダムに抽出された2,000人の失業者に月額670米ドル相当を給付する実験が行われました。
給付される条件は、実験開始時に25~58歳であり、最低限の失業保険に加入していることです。
また、受給者は、期間内に就職した場合でも給付を受け取り続けることができます。
実施例:ケニア
2017年から、ケニアでもベーシック・インカムの実験が行われています。
シアヤとボメットという二つの郡で約20,000人を対象に給付されています。
この実験では、毎月22.5米ドル相当の給付を12年間続けるグループ、毎月22.5米ドル相当の給付を2年間続けるグループ、約500米ドル相当の一括払いを受けるグループ、そして比較検討のためにベーシック・インカムを受けないグループ、この4つのグループが作成され、実験は現在も行われています。
コラム
働きたい人だけ働いて、みんな好きなことだけできるってユートピアですよね。
ベーシックインカム個人的にとっても取り入れてほしいな、と思っていたので、いろんな実施例も知れておもしろかったです。
もちろん、実施例はすべて実験的で小規模だったので、全国的に実施したらどうなるか、生活ができるレベルの金額まで引き上げるとどうなるかはわかりません。
でも、現在多くの人が貧困状況に直面していて、今後もその数が増えることが予測される中、貧困を解決する手段として大きく期待できる政策かもしれません。
ベーシックインカム普及に向けて、もっと議論が進んでほしいなと思います。