みなさんこんにちは、コクレポです。
アフリカって貧しくて、NGOが援助して・・ってイメージ強いですよね。
でもほんとは、アフリカで開発されたいろんなイノベーション(革新)があるんです。
今回は、保健分野のアフリカ発イノベーション紹介していきたいと思います。
通信・電子技術を活かしたイノベーション
最近、アフリカでは通信技術の発展がめざましくて、スマホもどんどん普及していってます。
最初に、この通信技術をいかしたイノベーションを紹介します。
心臓病検査/カーディオパッド(Cardiopad)
カメルーンには人口2,000万人に対し、心臓病の専門家が50人しかいません。
しかもその大半は都会に集中していて、医者にかかることができずに亡くなってしまうこともあります。
そこでカメルーンの技術者アーサー・ザングはカーディオパッド(Cardiopad)というタブレットコンピューターを開発しました。
カーディオパッドでは心臓の検査を行い、その結果を遠く離れた専門医に送ることができ、20分以内に解析されます。
マラリア検査/マティバブ(Matibabu)
マラリアの従来の検査方法である採血は、使い捨ての針やコットンなどのキットにコストがかかるうえ、衛生面の管理にも気をつかわないといけません。
また、注射器を使って採血をした上で血液の検査をするため、検査に時間がかかります。
それらの問題を解決するのが、採血せずにマラリアの検査ができるマティバブ(Matibabu)です。
注射器を使って検査していた従来の方法と比べると、1人当たりにかかる時間もコストも少なくて済みます。
これはウガンダのマケレレ大学の学生グループが開発しました。
光のセンサーと磁気を利用した機械に指を入れるだけでマラリアの検査を2分ですることができて、パソコンやスマホでその結果をみることができます。
超音波キット:ウィンセンガ(WinSenga)
安産に貢献するイノベーションもあります。
毎年、世界では約300万人の新生児が死亡し、200万件もの死産があり、20万人の母親が出産時に亡くなっています。
そのうちの60%以上が発展途上国で起きています。
特にサハラ砂漠以南のアフリカでは費用やアクセスの利便性が悪いことから事前に充分な健康診断が受けられていないことが原因の1つとなっています。
そこで開発されたのが妊婦の腹部に当てて超音波を測ることのできる棒状の小型機器ウィンセンガ(WinSenga)です。
病院にある本格的な超音波の機械にアクセスできないところでの活用が期待されます。
また、妊婦も生まれてくる子の心臓の音を聞くことができます。
これはウガンダで当時学生だったグループが開発したものです。
機械以外でのイノベーション
ここまでは通信技術など現代の技術を利用したイノベーションをみてきましたが、大がかりなテクノロジーを使わなくても今までにない柔軟なアイデア次第でイノベーションをもたらすこともできます。
世界では約7億5,000万人もの人々がきれいな水を簡単に手にいれられない状況にいます。
アフリカの農村部では女性や子どもたちが安全な飲み水を手に入れるために毎日数時間かけて水源と家の間を往復しなければいけません。
1991年、そんなアフリカの田舎に住んでいる女性や子どものために南アフリカで開発されたのがヒッポローラー(Hippo Roller)です。
ヒップローラー(Hippo Roller)
従来は頭の上にタンクをのせたりして水を運んでいましたが、ヒッポローラーでは地面に転がすだけで従来の5倍もの水を1度に運ぶことができます。
実際は90ℓの水を水平な地面の上で転がしたり押したりすることで10ℓの重さに感じられるそうです。
このヒッポローラーのおかげで従来と比べて水汲みを4分の1の頻度に減らすことができるようになって、女性や子どもは家事や農業、学校教育により多くの時間を使うことが可能になりました。
安全な水の供給について今度は都会の視点から見てみましょう。
画期的な水道管
都会でも水の供給問題は発生しています。
ケニアの首都ナイロビの低所得者居住区キベラでは家々が密集しており、地上の衛生状態も良くありません。
そのような状況では水道管を通す場所を見つけるのは難しいんです。
さらに、水道管が破壊され水が無断で使われることもあります。
そこで出てきたのが今までの発想を覆す画期的な水道管です。
それは水道管を地上ではなく、頭上に通します。
10万ℓの水を蓄えたタワーから重力を利用して上空のパイプに水を流し、水は人々の水源となる中継地点に送られます。
中継地点に水を送ってキベラの住民が水源まで歩いて8分以上かかることがないようにしようというのが目標です。
頭の上にパイプが通っていたら、多くの人の目に触れるため、意図的に通行人に破壊されるリスクも少なく、永続的に使えます。
蚊を寄せ付けないせっけん/ファソせっけん(Faso Soap)
また、シンプルなアイデアでマラリアを媒介する蚊を寄せ付けない方法があります。
それは蚊を寄せ付けないファソせっけん(Faso Soap)です。
当時学生だった西アフリカのブルキナファソのモクタール・デンベレとブルンジのジェラード・ニヨンディコの2人の発想によるものです。
このせっけんはシアバターやレモングラス、アフリカンマリーゴールドなどの天然材料を用いて作られ、蚊を寄せ付けない香りを放ちます。
せっけんが洗い流されたあとでも効果を持続させるために最新の美容用品のテクノロジーを利用しています。
10分の1㎜のカプセルに天然の防虫成分を入れて肌にくっつくようにし、少しずつカプセルがはじけて6~8時間もの間、蚊を寄せ付けないことができます。
さらに、洗い流されたせっけんが入っていく排水溝や水たまりでも蚊の繁殖を予防することができます。
私たちは日常的に石鹼を使うので、有害な化学物質を含む防虫剤を買う余裕のないアフリカの家庭も手軽に石鹼を手にいれてマラリアを予防することができるこのシンプルな方法は、人体や環境にもやさしく魅力的です。
試行錯誤で進むイノベーション
もちろん、イノベーションは成功ばかりが続くわけではありません。
開発当初期待されたが、うまくいかなかった例もあります。
たとえば煙の出ないストーブです。
煙の出ないストーブ
このストーブは肺炎のリスクを減らせると期待されてました。
日本に住んでるとイメージしにくいですが、世界には約28億人が室内で木炭や石炭などを使って調理しています。
バーベキューを毎日室内でやってるイメージですね。
めっちゃ肺に悪そうですよね。
このけむりの粒子は肺の細胞の機能を低下させ、呼吸器感染症などのリスクを高めます。
しかし、このストーブだけでは効果がないことが分かりました。
どちらかというとやっぱり換気の方が重要らしいです。
また、ネパールで行われた研究から木炭・石炭などの固形燃料より、ガスなどの液体燃料の方が50%粒子が少なく健康的であることが分かりました。
いかにして人々が入手しやすい手ごろな価格かつ持続可能で健康に優しい燃料を普及させるかが課題となります。
とはいうものの、煙の出ないストーブは肺炎の減少にこそ繋がりませんでしたが、やけどが減り、燃料の使用量が減って効率よく炊事できるようになったなど、ほかの面で功を奏した報告もあります。
発想はユニークだけど失敗した例もあります。
プレイポンプ(PlayPump)というものです。
プレイポンプ
子供たちが遊ぶときの動力を利用した仕組みのポンプです。
メリーゴーランド式の遊具で子供たちが遊ぶと水が貯水タンクに汲み上げられます。
しかし、設置されたプレイポンプの多くが使われなくなりました。
いくつか原因は考えられますが、子どもたちが遊ぶのでは動力源が不安定で効率が悪いというのが主な原因です。
結果的に充分な水を汲み上げることができない所が多かったです。
コラム
アフリカの技術のイノベーションはあまり報道されていないところで、アフリカの中から起きていて進んできています。
また、新しいイノベーションだけでなく既存の仕組みをうまくいかしてる例もあって、たとえばタンザニアやガーナでは、ソフトドリンク会社がソフトドリンクの冷蔵・運搬のノウハウを政府と共有して、そのノウハウで、一定の低温を保たないといけないワクチンの冷蔵・運搬に応用してたりもするんです。
また、技術でのイノベーションがなくても慣習を変えることで状況を改善することだってできます。
たとえば、1980年代後半から1990年代半ばにかけてウガンダではHIV感染率を低下させることに成功しました。
これは技術のイノベーションではなく、政府がコンドームなど避妊道具の普及をおこなって病気の広がりを防いだり、HIVという病気についてオープンに話し合える環境(HIVは性交渉でうつることがほとんどなので、オープンには話しづらかったから。)を作ることで、国の人々の行動が変わってきたことが成功を招きました。
技術だけのイノベーションじゃなくて、より多くの人が生きていきやすい文化や風潮にしていくイノベーションも大切なんですね。
アフリカは援助されっぱなしじゃなくって、自分たちで開発できる力を持ってるってこと、知ってほしいなと思います。