みなさんこんにちは、コクレポです。
スイスの銀行大手クレディ・スイスって聞いたことある人も多いのでは?
でも、これまでに拷問や麻薬取引、マネーロンダリング、汚職、その他重大犯罪に関与していた顧客の存在が明らかになったり、その中には有名な政治家や富裕層が名を連ねていることが判明するなど、数々のスキャンダルを起こし、何度も罰金を科されてきたこと知っていますか?
犯罪等によって得られた汚いお金を管理し、利益を獲得し続ける・・こんな状態がなぜまかり通ってきたんでしょう?
犯罪の温床となる訳
スイス銀行にはなぜ犯罪等で得られた不正資金が集まるんでしょう。
1つ目の大きな理由は秘匿性を利用されるからです。
銀行の秘匿性が高いため、外国政府に口座情報共有がされません。
また外国側から情報獲得のために捜査することもできません。
このような仕組みを利用しスイス銀行に財産を隠すことで脱税をする人が現れるんです。
またマネーロンダリングも同じです。
マネーロンダリングとは、犯罪によって得た資産をまるで合法的な手段で得たように見せる行為で、資金洗浄とも呼ばれます。
秘匿性が高いことで具体的な取引の流れが見えにくくなるため、資金が合法なものか否か判断し難くなるんです。
実際に2020年、クレディ・スイスは、ブルガリアのマフィアのためにコカイン取引によるマネーロンダリングを助けたという疑惑に関して、スイスで刑事告発されました。
クレディ・スイスは、コカインの密輸に関わり有罪判決を受けているブルガリアの元レスラー、エベリン・バネフ氏とその関係者との取引において、スマーフィングを行ったとみられています。
スマーフィングは、多額の不正資金を預金など取引する際に、報告基準額を超えないよう、少額に分割して取引を複数回行ったり、複数の個人で行ったりするマネーロンダリングの一種の手口です。
このようにスイスの金融機関は、秘匿性が高く金銭の流れが見えにくくなることを利用して、犯罪に悪用されやすいです。
さらに、スイス銀行を監視する体制が不十分なことも理由です。
スイスには金融セクターの監督機関として金融市場監督機構(FINMA)が存在します。
しかしこの機関が有する権力はそれほど強くありません。
というのも、リスクのある顧客の受け入れに対してFINMAが行えるのは、銀行に警告することくらいで、実際に受け入れるかどうかは最終的に銀行が決めることなので、銀行はリスクをとり続けるんです。
法律上、不正行為に直接関与した場合にのみ、銀行員に制裁を下すことができると決められているので、「何も知らなかった」という理由で無罪になる事例が多いです。
また、課される罰則も弱いです。
国内外に関わらず悪事が発覚したとしても、銀行が求められる罰金の額は銀行が保有する総資産と比較するとわずかです。
罰則に違法行為に対する強い抑止力がないため、銀行はリスクをとり続けるんです。
銀行はリスクを冒しながら他人の不正な利益から分け前をもらい、その代わりに安全で秘密な財産の隠し場所を提供し、資金をため込むという流れがビジネスモデルとして残存しています。
またスイスの銀行法第47条では、スイスのジャーナリストは、プライベートバンクの保有するデータを所持しているだけで刑事訴追、さらに公開しただけで起訴の危険性があるんです。
最近のリーク
2022年2月、スイスの銀行大手クレディ・スイスで大規模な内部告発が発生しました。
リークされた情報の中身は30,000人もの顧客の18,000件以上に及ぶ口座リストです。
そして、著名な富裕層や政治家などを初めとして、クレディ・スイスの顧客が重大犯罪に関与していたことも明らかになりました。
犯罪等で得られた不正資金が預けられていた可能性がある口座には、80億米ドル以上の資産が保有されていたといいます。
たとえば、2001年に起訴されたセルビア人証券詐欺師、2008年に贈収賄で有罪判決を受けたドイツ企業の社員、フィリピンでの人身売買で2011年に終身刑判決を受けたスウェーデン人がその例です。
改善へ?
ナチスがドイツでユダヤ人を迫害していた頃、ユダヤ人の多くは、資産の一部を守るために資金をスイスの口座に、貴重品をスイスの貸金庫に預けていました。
しかし第二次世界大戦後、スイス銀行はホロコーストの犠牲者が所有する口座の詳細を公開することに応じず、資産を返却しませんでした。
その理由は守秘義務で、死亡診断書を含む書類の提出など、法律で定められた条件を満たせないのであれば口座の詳細を明かせないという態度を示したんです。
この問題に対し、世界ユダヤ人会議(WJC)においてスイスがホロコースト犠牲者の預金口座の問題を調査するよう求められたのを機に、その代表者とスイス政府及びスイス銀行間で交渉が行われました。そしてユダヤ人やナチスドイツ政権の財産の保管場所としてスイスがいかに大きな役割を担っていたことが明らかになりました。
1995年、当時連邦大統領だったカスパー・ヴィリガー氏は、スイスのホロコーストへの加担について、「我が国によるユダヤ人の扱いについて、かなりの罪の重さを感じている」と発言しました。
これはヨーロッパのユダヤ人に対して、スイスが何らかの形で責任を負うことを公式に認め謝罪する機会になりました。
そして銀行側がホロコーストの犠牲者と彼らの相続人に対し12億5,000万米ドルの支払いに応じました。
2000年代以降は、金融の透明性を求める声が挙がっています。
中でも2007年、銀行大手スイス・ユニオン銀行の銀行員ブラッドリー・ビルケンフェルド氏が、スイス・ユニオン銀行が何千人ものアメリカの富裕層の脱税を手助けしたという情報を自主的にアメリカ当局に提供したことで、状況は一変します。
この暴露に対しアメリカはスイスに圧力をかけ、2014年から富裕層の口座保有者の財務秘密を一方的に開示させました。
同様のことをEUも行って、銀行は情報を明らかにしなければ罰則を受けるという義務を負いました。
さらに2017年、経済協力開発機構(OECD)は、外国の金融機関に保有する口座を利用した租税回避を防止するために、自動情報交換制度(AEOI)を策定しました。
AEOIは、金融機関に非居住者の口座がある場合、各国の税務当局を通じ、相手国の政府にその口座情報を報告する制度です。
スイスはAEOI導入に署名し、金融情報を他国へ相互提供しています。
しかし、税収を失っている国の多くはスイスと情報交換に関する合意がまだできていない貧しい国々で、90カ国以上(そのほとんどが低所得国)の富裕層が依然としてスイスの口座に資金を隠しています。
このシステムの不公平さは、汚職を助長し、低所得国が必要とする税収を奪っています。
このように、改善への道を歩んでいるようだが透明性の向上に向けてまだまだ課題は山積みです。
イギリスのNGO団体であるタックス・ジャスティス・ネットワークは、各国の法律や金融システムがどれくらい富裕層の資産隠しや犯罪のマネーロンダリングを可能にするかを指標化し、金融秘密指数として発表しています。
その金融秘密指数においてスイスは2020年の上位3位を維持しています。
このことからも、依然としてスイスの銀行機密が高いことは推測できます。
コラム
スイスの銀行業界は大規模な改革を行わなければ、正当な金融機関としての信頼を失うばかりです。
でも、データを公開した内部告発者は、銀行が「法的枠組みの中で利益を最大化し、良き資本家であるだけ」であるため、銀行だけが現状を非難されるべきではないと示唆しました。
つまり、変えるべきなのは犯罪を可能にする法律です。
スイス政府が法律を変え、スイス銀行が抱える闇を照らす光となる日はくるのでしょうか?