みなさんこんにちは、コクレポです。
2020年に入ってから、ヘンリー王子とメーガン妃のイギリス王室離脱の話題が、とっても大きく報道されました。
でも、これってそんなに重要な話題なんでしょうか?
他の報道を切り捨ててまで報道する価値があるんでしょうか?
今回は、国際報道の王室報道に関して、分析してみましょう。
世界のロイヤルファミリー
現在、世界には27の王室があります。
(参考文献では、マレーシア王室を省いてますが、この記事では王室として計上しています。)
27か国の内訳は以下の通りです。
・実質的な権限を持たない王室(12か国):ノルウェー、スウェーデン、オランダ、スペイン、グリーンランド、ルクセンブルク、ベルギー、レソト、カンボジア、マレーシア、イギリス、日本
・一部限定的な政治的権限を有する王室(3か国):モナコ、リヒテンシュタイン公国、トンガ
・君主が実質的に国家を統治する王室(12か国):サウジアラビア、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、スワジランド、ブルネイ、オマーン、バーレーン、ヨルダン、モロッコ、タイ、ブータン
そもそも、なんで国王・王室は存在するんでしょう?
歴史をさかのぼると、国王は各地の権力争いに勝ち残った一族に由来します。
その後、その一族は世襲制の独裁政権という形をとり始めました。
その権力を維持するために抑圧的な統治だけでなく、国民に受けられるようにイメージ作りにも力を入れました。
宗教とも関連させ、その一族が国を支配し続けることは神から命じられたものとする神話も作り上げることもよくあります。
でも、腐敗や権力濫用などが原因で王室に対する不満が募ると、軍や民主化運動によって倒されて、完全にその存在が消滅されたものもあります。
いまある王室の多くは権力だけ奪われ、その象徴的な存在だけ守られています。
王室報道はどのようにされている?
実権を握る国家については、王室の動向に着目することは理にかなってますよね。
なぜなら、どのような人物が王室を構成するかによって、国家全体の体制や、国際関係が大きく変化するからです。
でも実際は、実権を持たない象徴的な王室の動向が頻繁に報道されています。
政治に直接関与しない王室の話題が、どれほど重要視されているのかを詳しく見てみましょう。
事例として、朝日新聞の10年間(2009年1月から2019年12月)の記事のうち、世界各国の王室に関する報道かつ政治的な要素のない話題を取り上げた記事をGNVが収集しました。
なんと全世界の王室報道のうち半数近くがイギリス王室に関連した話題です。
圧倒的な注目を受けているイギリス王室の報道内容を詳しく見てみると、結婚・出産に関する話題が半数以上を占めています。
世界の王室離脱
では、イギリスのヘンリー王子とメーガン妃(旧サセックス公爵、旧サセックス公爵夫人)に関する話題は、どれくらいの規模で報道されていたんでしょうか?
2020年1月1日から3月18日までの朝日新聞(朝刊・夕刊)をGNVは調べていました。
その結果、旧サセックス公爵夫妻によるイギリス王室からの離脱に関する記事は、約2.5か月の間に10記事書かれています。
10年間の全朝刊を通じて報道されたサウジアラビア王室に関する報道を大きく上回ってます。
今回のイギリス王室離脱がこれほど大きく取り上げられるのは、イギリス王室において離脱が珍しい事例とする見方もあるかもしれません。
でも、日本では一般人と結婚した皇族女性は必ず皇籍を離脱するように、王室からの離脱はそんなに珍しい事例ではないんです。
世界には、離脱の背景に重大な問題があることもあります。
それらの例を、これまでに報道された文字数と一緒にみてみましょう。
マレーシアの任期途中突然退位
任期満了まで約2年を残したこの退位は、マレーシアがイギリスから独立した1957年以来初めての出来事でした。
退位の理由は明らかにはされていませんが、元ミス・ロシアだったロシアの女性との結婚がその背景にあるとされています。
国王を辞めるほどの大恋愛の末に結婚した相手であったにもかかわらず、1年を経たずして離婚しました。
このことに関する報道は朝日新聞の夕刊で260字だけでした。
人権問題と関わるさらに深刻なケースもあります。
タイ元皇太子妃の離脱
タイで起こった、元皇太子妃の離脱のケースをみてみましょう。
2014年12月、当時皇太子であったタイのワチラロンコン新国王は、皇太子妃だったシーラット妃と離婚し、シーラット氏は王籍を離脱したのち民間人に戻りました。
でも、離婚後シーラット氏の両親や兄弟が、汚職罪や不敬罪によって次々と逮捕されました。
(タイには厳しい不敬罪があって、フェイスブックへの投稿が原因で30年の禁固刑となった例もあります。)
シーラット氏との離婚に関する話題は、朝日新聞夕刊にて455字の記事となっていた。
サウジアラビア王室から逃亡を図る女性たち
アラブ首長国連邦(UAE)では王室から逃亡を図る人がいます。
UAE副大統領兼首相・ドバイ首長ムハンマド・ビン・ラシド・アル・マクトゥム氏の身内の女性がここ数年、立て続けに逃亡を図っています。
まず、2000年にマクトゥム氏の娘であるシャムサ王女が、イギリスにて休暇中に逃走しましたが、2か月後に見つけられ、ドバイに強制送還されています。
次に、2018年にシャムサ王女の妹であるラティファ王女がヨットにて国外へ脱出しようとしました。
でも彼女もインド付近でUAEの特殊部隊にヨットを乗っ取られ、ドバイへと強制送還されています。
2019年には、マクトゥム氏の妻であるハヤ妃がイギリスに亡命しました。
ハヤ氏は亡命先のロンドンで訴訟を起こし、2020年3月には、裁判所によって、マクトゥム氏による娘2人の拉致の指示、および妻への脅迫が事実認定される決定が下されています。
でも、これほどの人権に関わるほどの一連の騒動であっても、朝日新聞内では一度も取り上げられていません。
でも、どの話題もほとんど日本のメディアによって取り上げられていません。
これら3事例の報道の総文字数を合計しても、旧サセックス公爵夫妻の王室離脱報道の総文字数の10分の1にも満たないです。
ゴシップ重視の王室報道
もし、王室に関する話題を報道する価値があるなら、むしろ、サウジアラビアやUAE、ブルネイの王室といった国家体制および国際関係に影響を直接与える、実質的な権力を持った国を報道すべきです。
日本との経済的な繋がりという観点でも、これらの国々の存在は決して軽視することができません。
日本経済は、サウジアラビアやUAEからの石油、ブルネイからの天然ガスに大きく依存しています。
そのため、後継者選びといった王室の動向が、大きな懸念事項となります。
でも、これら3か国の王室における結婚・出産といった話題は10年間を通して一度も報道されていません。
イギリス王室に関する記事は、ゴシップがとても多いです。
これほどまでに、日本のメディアで、イギリス王室の私的な話題が好まれる背景には、ダイアナ妃のロイヤルウェディングの華々しさが余韻として残っているのかもしれません。
この結婚式では史上最高額の予算が投入され世界中でテレビ中継を通じて7億5,000万人もの人々が見ていました。
その後、人気絶頂期に交通事故で無くなったダイアナ妃の人生は、ドラマ的な要素があったともいえます。
いずれにせよ、偏った王室の話題、ましてや国内や国際的な政治・経済に直接は関与しない象徴的な王室を中心に、結婚・出産、そして王位継承権から遠い王子の離脱に関して集中的な報道をすることは必要なんでしょうか?
さらに、王室内部での重大な人権問題や、王室による権威主義的な体制といった問題があるにも関わらず、「権力の番犬」であるメディアが、中東の王室ではなくイギリス王室の動向をとりたてて監視する意義は何なのでしょうか?
コラム
イギリス王女のドレスは今年はこんなの着てました!華やか!っていう報道は全然あってもいいと思うんです。
でも、国際問題は限られた枠のなかでしかなかなか伝えられないので・・ってメディアは言ってる状態のなかで、この話題そんな枠とる??って思います。
イギリスのお姫様王子様のお話を10回する枠あるなら、せめて5回に減らしてもっと世界中で起こっている大きな問題を伝えてほしいな、と思います。